第102章 ずっと
「FBIを責めないのか」
「責めたところで起きた事はどうしようもない。それよりも今はひなたの回復が先だ」
・・・珍しい。
あまりにも彼が冷静さを保ち過ぎていて、逆に心配になる。
「成長したな?」
「馬鹿にするな」
でも、言い合いは相変わらずのようだ。
喧嘩してほしくはないと思っているのに、しているとどこか安心するこの感覚は何なのだろう。
「こちらは体勢を整え直す。犠牲があまりにも多く出たんでな」
そう言いながら、赤井さんは立ち上がって私達から距離をとって。
犠牲・・・とはもしかして、FBIの人が・・・?
「彼女はどうするつもりだ」
赤井さんは近くの木へと寄りかかると、ポケットから取り出した煙草に火をつけながら、零にそう問いかけた。
「・・・何が言いたい」
キッと睨み付けながら低い声で問い返すと、赤井さんは煙を纏いながら静かに瞼を閉じて。
「FBIに任せておけとは言わないが、中途半端にさせていると今度は本当に始末されるぞ」
・・・始末、か。
確かにそれは否めない。
そうなれば、零も私も、だろうな。
「組織に潜れない人間に言われたくないな」
背中で赤井さんに返事をしながら、零は私の前に跪くと心配そうな表情を元に戻して。
「・・・触れても、大丈夫か?」
私にだけ聞こえるような小さな声で、不安そうに尋ねた。
「・・・・・・」
大丈夫。
そう答えたかったけれど。
すぐにその返事はできなかった。
何となくだが、今自分の体がどういう状況なのか察しているから。
「・・・分かった」
何も言わなかったのに。
零は優しい笑顔を向けると、納得の言葉を口にした。
「FBI」
徐ろに立ち上がると、零は赤井さんを遠回しに呼んで。
その日、彼の目に私が映ったのはそれが最後だった。
「僕は一度奴らと話をつけてくる。・・・ひなたを頼みたい」
・・・彼がここまで冷静になって、FBIを頼るなんて。
そこまで追い込まれているのか、四の五の言っている場合ではないのか。
とりあえず足を引っ張る元凶に私がいることは間違いないだろう。