第102章 ずっと
「引き受けよう」
FBIがいるなら心強いはずなのに。
この胸のざわめきは何なのか。
「・・・すぐ迎えに行く」
彼は私に背を向けたままそう言うと、来た道を引き返していった。
待って、と。
私も連れて行ってほしい、と言いたかったのに。
・・・声が出ない。
悔しくて拳を作りたくても、指一本を動かすこともできない。
「・・・・・・」
零の足音が聞こえなくなった頃、赤井さんは咥えていたタバコを携帯灰皿に突っ込みながら、こちらへと近付いてきて。
「体が疼く感覚はあるか。Noなら視線を下に、Yesなら俺を見ていろ」
私の目の前に屈むと、いつもの様に冷静に、でも言葉だけはとんでもない事を投げてきた。
とりあえず彼のその問いには、そっと視線を下にして。
やはり赤井さんも、思っている事は一緒なのか。
私が吸ってしまったあの煙は、以前私が記憶障害を起こす切っ掛けになった、あの薬ではないのか、と。
でも赤井さんの質問にもあったが、その感覚が無い事が一番の疑問だった。
代わりにあるのは。
「痺れ、か」
「!」
赤井さんのその一言に、思わず視線を戻した。
それが肯定だという事は、誰が見ても明らかなくらいに精一杯、目を見開いた状態で。
「断定はできないが、恐らくあの時の薬とは違う物だろう。厄介な物でなければ良いが」
・・・あの情報屋を追っていただけあって、その薬についてはやはりFBIにも知識があるのか。
彼の言う通り、ただの痺れ薬程度なら良いけど。
ーーー
その後、駆け付けてくれたジョディさんの車で私は病院へと運ばれた。
幾度となく運ばれるせいで、医者も気の毒そうに私を見ていて。
こちらとしても、申し訳ないやら情けないやらで、目を伏せるしかなかった。
「具合はどう?」
一通り診察が終わる頃、体は多少動くようになっていた。
その様子を見に来たジョディさんに口角を上げて答えれば、少し彼女の表情も和らいだように見えて。
「・・・今回はFBIの手が遅くなって、本当にごめんなさいね」
それでもまだ曇りが残る表情に、呆気なく引っかかってしまった私も悪かったのだと、改めて遅過ぎる反省をした。