第102章 ずっと
「声が出ないのは不幸中の幸いかしら?拷問で情報を吐かせることはできないのだから」
組織は毎回私から情報を絞りたがるが、私は彼らが欲しがる情報なんて持ってはいない。
バーボンが公安警察で、赤井秀一はまだ生きている、ということ以外は。
「貴女から何も得られないのは残念だけど、静かに消せるのは好都合よ」
・・・消すつもりなんて無いくせに。
少なくとも今は。
彼女からは殺気を感じない。
だったら逃げるのは今しかない。
彼女が運転している、今しか。
「・・・・・・」
そう思い、気付かれないよう静かにドアロックを開けた。
運転中に身を投げるのは中々勇気がいる事だが、組織に捕らわれて公安やFBIの手間をかけるよりは余程良い。
少しでもスピードが落ちた時が勝負だ。
その瞬間まで、ベルモットとは会話を途切らせないように。
・・・何気無く。
「・・・っ・・・」
今だ。
一瞬、僅かだがスピードが落ちたその瞬間、ドアハンドルに手を掛け、意を決してドアを開けた。
「!」
・・・はずだったのに。
「無理よ。そこは閉める瞬間に接着剤が出るように細工してあるわ」
読まれていた。
私がここから飛び出す事を。
そんな事まで先手を・・・打たれる、なんて・・・。
「・・・・・・ッ!!」
いや、違う。
「ッ・・・」
違う。
彼女は・・・ベルモットは、最初から。
私をここから出す気なんてなかった。
殺気を出す必要が無かったんだ。
「生きてここから出る方法は2つ」
「・・・・・・」
・・・前言撤回だ。
生きてここから出すつもりなんて無いくせに。
車が止められたのは、どこかの峠で。
こんな所で銃声がしたとしても、気が付かれないだろうな。
「1つ目は私を殺して逃げる。2つ目は一生組織に仕えると誓う」
そんな選択肢、あるようで無いものだ。
「選ばせてあげるわ」
・・・だったら、私が選ぶ道は一つだけだ。
『生きて逃げるつもりが無いとすれば?』
そうスマホに打ち込み、ベルモットに見せ付けた。
それを読んだ彼女は数秒の間を作った後、大きく口を開けて高々に笑い始めた。