第102章 ずっと
「・・・・・・」
何となく状況が理解できたおかげか、呼吸だけはゆっくりと落ち着きを取り戻して。
とりあえず、何かメモが欲しい。
会話になるかどうかはさておき、ベルモットと会話する術が欲しくて。
何かないかと車内をキョロキョロと見回していると、突然目の前に何かを差し出された。
「これを使うといいわ」
そう言って彼女が差し出したのは、真新しいスマホで。
一瞬の戸惑いからベルモットに一度視線をやっては、再びスマホにそれを戻した。
これを受け取ったことによって、何か不利な事が生まれる可能性はあったが、今だけなら問題無いだろうと判断し、おずおずとそれを受け取った。
『何をするつもりですか』
スマホを開けば、何も設定されていない、見た目通りの中身で。
メモ画面を開いてはそう文字を打ち込み、ベルモットへと見せた。
それを横目で確認すれば、彼女はすぐに視線を前に戻して。
「さっきも言ったでしょ。バーボンが仕事をしないから、少しその尻尾を引っ張るだけよ」
・・・彼が仕事をしない?
「探り屋として組織にいるのに、貴女と遊んでばかりで情報を寄越さないのよ」
それ、は。
私からは何とも言えない事だ。
謝る気は無いけれど。
「独占欲も、相変わらずのようね」
そう言ってベルモットは、私の首筋をなぞって。
ゾワッとする妙な感覚が走った瞬間、昨日零に付けられた痕があった事を思い出した。
今更遅いが、そこを慌てて手で塞ぐと、彼女は嘲笑うようにクスクスと笑いを漏らして。
「まあ、何を探っているのかは知らないけど。彼、私以上に秘密主義だから」
確かに、秘密主義なのは頷く他ない。
私が聞いても、きっとはぐらかされる。
「貴女にも、幾つ秘密を抱えているのかしらね?」
・・・そんなの今更だ。
私だって、零には幾つも秘密がある。
「今回は上からの命令だから仕方がなく動いたけど、本当なら貴女から出向いてもらいたい所よ」
ベルモットにも上の人物がいるのか。
そういえば以前、倉庫で電話をしているのを聞いた気がする。
・・・そもそも出向いてもらいたいのなら、最初からそう言って穏便に話を進めてほしかった。
それを許さなかったのはバーボンだろうけど。