第102章 ずっと
彼が家を出た後、どうにもジッとはしていられなくて。
大人しくしていろとは言われたが、部屋の中なら少しくらい動いても構わないだろうとベッドから降りた。
「・・・・・・」
静かだ。
当たり前ではあるが、あまりにも静かに感じる。
それにどこか不気味さを覚えながら、リビングのソファーへと腰掛けて。
そういえばここは事務所として使っているが、依頼人が直接尋ねて来た事はまだないな、と思ってはデスクの書類に目を向けた。
零が整理してくれたのか、私がするべき仕事はそこには無くて。
・・・本当に、何もする事がない。
こういう時だから、やはり彼の指示通り大人しく過ごすのが良いのだろう。
そう考えながら長い息を吐き、天井を見上げた。
「・・・!」
そういえば、沖矢さんやコナンくんにお礼を言わなければ。
本当は直接会って言いたいが、今出歩く事はできない。
電話も声が出ない。
消去法でメールで伝える事を選ぶと、各々に簡素なお礼のメールを送った。
返信は要らないと付け足しておいたが、きっと沖矢さんは・・・。
「・・・・・・」
こうして、返信をしてくると思っていた。
それも、想像以上に早い時間で。
またいつもの様な調子で返信をしてきたのだろうと、彼から来たそれを開いた瞬間、一瞬背筋に冷たいものが走った。
『今、どこにいますか』
それは何気無いといえば何気無い確認。
けど、どこか緊迫感を感じる。
ただのメールなのに。
・・・気の所為なら、良いのだけど。
『事務所です。何かあったんですか』
心拍数を僅かに上げながら返信をするが、それから数分、返事が来る事は無かった。
聞くだけ聞いて私の質問には答えてくれないのか、と唇を尖らせては、スマホをソファーへ投げるように置いた。
・・・やはり何かあったのか。
妙な胸騒ぎが、おさまらない。
声は出せないけれど、気になって仕方がない。
こちらの事情は沖矢さんも分かっているのだからと、ダメ元は承知で投げたスマホを手に取り、彼へと電話を掛けた。