第102章 ずっと
「風見さんの服から、零の匂いがした」
今よりもっと、儚いものだったけど。
でも安心感を感じるには十分過ぎたから。
だからその手を、離せなかったのだと思う。
「・・・そういう事か」
納得の言葉を口にしながらも、どこかそれは不服そうにも聞こえてくる。
「風見を僕と間違えていた訳じゃないな?」
・・・それは、違う。
流石に風見さんだと分かっていた。
そう言うように首を振ると、彼は一度長い深呼吸をして。
「・・・すまない。ひなたを信じていない訳ではないが、どうにも嫉妬癖が抜けないんだ」
嫉妬癖・・・口にするのは初めて聞いたけれど。
確かに彼にはピッタリな言葉かもしれない。
「無防備に風見へ寄りかかって、服を掴んで離さないひなたを見て、冷静ではいられなかった」
「・・・・・・」
そんな事をしていたのか。
それは流石に、どこか後ろめたさを感じる。
無意識だったとはいえ、零の気持ちを逆撫でしてしまうものだったと思う。
・・・寧ろ、無意識なのがタチが悪い。
「本当は今、酷く鳴かせたい気分だ」
「・・・!」
そう言いながら、背中に彼の手が這って。
ひんやりと冷たいそれは、どこか気持ち良くも感じるが、それ以上に。
「・・・っ」
こんな時なのに、体が疼いてしまう。
「でも今は」
いつも以上に熱を帯びた体から彼の手が離れると、今度は首筋に指を這わされて。
ピクリと体を震わせると、彼の体が少し浮かされた。
「・・・ッ・・・」
顔がゆっくり近付いてくると、それは彼の手がある首筋の方へと引き寄せられるように向かって。
そこに唇が軽く触れた瞬間、同時に生暖かい感覚も覚えた。
・・・これは、彼の舌が触れている。
「・・・っ、ん・・・」
その感覚に、空気が抜けるような声を微かに漏らすと、反射的に彼の服を掴んだ。
「・・・ッ」
そのまま彼は強く吸い付くと、嫉妬の証を私に残してみせて。
今は見えないけれど、きっとそれは彼の嫉妬の強さを示すように、いつも以上に赤く濃くて。
長く消えないものなのだろうな、と脳裏で考えた。