第102章 ずっと
「・・・一度起こすぞ」
そう言葉を掛け不安定だった体を元に戻されると、ようやく互いの視線がきちんと交わった。
「もう一度聞く。何かあったのか?」
それは問い詰めと言うよりは、確認で。
怒っている様子でも、必要以上に心配している様子でもなかった。
「・・・」
声は出さないように、首を小さく横に振れば、彼も納得したようで。
再度確認をして来ない辺り、私を信じてくれているのだと嬉しくなった。
「・・・それなら良い。何か食事を用意してくる、少し待っていてくれ」
布団を掛け直されながらそう話すと、彼は静かに一度部屋を去った。
正直な所、もう少し怒っていると思った。
沖矢さんに連絡を入れたのはコナンくんとはいえ、工藤邸に行ってしまった。
それも、こんな無防備な状態で。
それは私の体調管理が至らなかったからだ。
でも彼が怒っていないのは恐らく、昨日の私の言葉を信じてくれているからで。
・・・今日はきちんと、言葉にはできないけれど。
「・・・・・・」
やはりまだ体はダルい。
頭も僅かに痛み、寒気がする気もする。
よくさっきは彼に飛びつけたなと思う程、今は指一本動かすことも難しい。
彼が傍に居るだけで原動力になる。
それは良い方にも、悪い方にも。
ーーー
彼が用意してくれた食事も、殆ど残してしまった。
申し訳ないと目で訴えたが、一口食べただけでも十分だ、と彼は言ってくれて。
風邪を移してしまっては悪いからと隣で寝ることは拒否したのに、傍に居たいからと言って同じベッドで横になった。
彼のこういう強情な所も好きだ。
「・・・一つだけ、聞いてもいいか?」
「?」
そんなこの上ない安心感に包まれている中、彼がポツリとそう尋ねてきて。
「今日、風見の服を掴んで離さなかったのは何故だ?」
「・・・・・・」
風見さん・・・そういえば、沖矢さんに送ってもらって一度風見さんに会ったっけ。
熱のせいで記憶が曖昧だが、あの時は確か・・・。
「・・・零の、匂いがしたから」
「匂い?」
喉を痛めないよう、彼の耳元でギリギリ聞き取れる声で囁いた。