第102章 ずっと
「では、私はこれで」
安心感からか、瞼が酷く重くて。
瞼を閉じながら、沖矢さんの声と彼が車に乗り込む音が聞こえてくるのを感じた。
必要以上に会話をしない辺り、風見さんは零から何か言われているのだろう。
・・・そういえば、結局お礼をきちんと伝えられなかった。
哀ちゃんにも、コナンくんにも。
近い内に言っておかなければ。
そんな事を思っている間にも、いつの間にか私も車の後部座席に乗せられていた。
ゆっくりと、丁寧に。
割れ物を扱うかのように乗せられた後、風見さんが離れていった時、さっきまでの安心感が一緒に遠のいていくようで。
それ所か、不安が押し寄せてくるようで。
「・・・っ」
力無く、思わず風見さんの袖を掴んだ。
「ど、どうされましたか・・・っ」
・・・戸惑っている。
風見さんを、困らせている。
分かっているのに、その手を離せなくて。
でも、それを伝えられなくて。
ただ必死に、目で訴えた。
「・・・悪いが、運転を変わってもらえないか」
「はい」
暫く風見さんの視線を感じていると、彼は助手席に居た誰かへと声を掛けた。
他に誰かが居た事にも気付けない程、注意力も落ちている。
それでも風見さんを掴む手を離せないでいると、彼は私を奥の方へと動かし、隣へと座ってくれて。
「これで、大丈夫でしょうか?」
そう声を掛けてはシートベルトをつけられる瞬間、自分が何に安心感を感じていたのか分かった。
・・・匂い、だ。
風見さんから、僅かだが零の匂いがする。
その僅かな匂いに安心感を抱いては、縋りついているんだ。
「出してくれ」
風見さんがそう運転席に座った誰かに指示を出すと、車はゆっくり出発して。
その間も、風見さんの服を掴んで離すことはできなかった。
僅かな匂いに引き寄せられるように風見さんへ寄りかかると、安心感に包まれた後、いつの間にかゆっくりと眠りについた。
ーーー
あれからどれ程眠ったのだろう。
今日はずっと眠っているばかりな気がする。
瞼は降りているが、意識は戻ってきた時、額にひんやりと冷たい感覚を覚えた。
・・・ああ、これだ。
その冷たさを感じた時、そう体が求めていた感覚を覚えた気がした。