第102章 ずっと
彼に横抱きにされたまま、沖矢さんの車へと運ばれて。
丁寧に助手席へ乗せられると、シートベルトを付けた上に薄めの毛布を掛けられた。
「まだ熱は下がっていない、体は冷やすな」
そう言ってドアが閉められ、彼が運転席へと乗り込んで来た時。
「さて、行きましょうか」
「・・・」
もう彼は、赤井秀一の片鱗を完全に隠していた。
姿はずっと沖矢さんのままだったのに。
変わったのは声と口調だけなのに。
本当に別人と話しているように感じるのは、何なのだろう。
・・・そして、少し寂しく感じるのも、何なのだろう。
「・・・・・・」
・・・苦しい。
この息苦しさは熱のせいなのか。
頭痛も酷く、目眩もする。
本当に・・・情けない。
「その様子では彼に連絡も無理そうでしたので、こちらから連絡をさせて頂きました。この先で落ち合う予定です」
沖矢さんが・・・零に連絡を。
以前も連絡を取っていたようだけど、結局彼らは今どういう関係なのだろう。
・・・とりあえず今の所は、何でも良いけれど。
「家までお送りすると言ったんですが、残念ながら承諾頂けませんでしたので」
成程・・・だから別の場所で。
確かに零なら言いそうだ。
ーーー
それなりに距離はあった。
どこまで連れて行かれるのだろうと不安になり始めた頃、車は見知らぬ駐車場へと止められて。
「・・・お待ちしておりました」
車が止められるなり、その隣に誰かが立ち窓越しに沖矢さんへ声を掛けた。
それを横目でぼんやりと見ながら頭痛に耐えていると、沖矢さんが徐ろに車を降りて。
「彼のご友人の方で?」
そう目の前の人物に尋ねた。
「ええ、そうです」
それに答えたこの声は・・・風見さんの声だ。
零ではないことに少し胸のざわつきを覚えながらも、こちらへと回り込んで風見さんが近付いてくる気配を感じた。
「失礼します」
助手席のドアを開けられると、風見さんは一声掛けた後、私をそこから引き出すように抱き上げて。
その時一瞬、何かに安心感を覚えた。
何に感じたのかは分からないが、心も体も落ち着いていくのが、手に取るように分かった。