第102章 ずっと
「君の看病はこれで二度目だな」
そういえば、以前もここで風邪を引いてしまった事があったっけ。
あの時はまだ、彼も零の正体も知らなかったけど。
「・・・移してみるか?」
そして、そういう行為を取られてしまった事も思い出して。
あの時は一時の気の迷いというのか、本当に狂っていた。
思い出したくもない、と彼を睨み付ければ、嘲笑うような笑みを向けては小さく鼻で笑って。
「冗談だ」
彼の冗談は冗談に聞こえない。
こういう時は、特に。
「彼に連絡を入れたくなければ家まで送るが、どうする」
知らぬ間に貼られていた額の冷却シートを剥がされては、今後の行先を尋ねられて。
いつまでもここに居る訳にもいかない。
早めに帰った方が良い事も分かっている。
でも、沖矢さんからそれを促すのは珍しい、と思いながら視線を小さく向けた時、彼はもう一度フッ笑って。
「君を素直に帰すのが珍しいと思ったか?」
「!」
人の心の中を相変わらずの様子で読んでみせた。
それは目が合っているせいだと思い、伏せるように彼から視線を逸らした数秒後。
目の前に彼の手が置かれ、ベッドがグッと沈み込んだのを感じた。
「弱っている君を見て、簡単に大人しくしていられる俺ではない」
彼の影が顔に掛かり、視界が暗くなって。
上からの彼の威圧感で潰されそうで。
恐る恐る視線を彼の方へと動かすと、そこにはもう、いつもの笑みは無かった。
「心配していないとでも思っているのか」
・・・その目はどこか怖くて。
そこから確かに感じる怒りの感情はあるが、でも決してそれだけを含んでいる眼差しではなくて。
「自分で管理できない君も悪いが、君の変化に気付けていない彼にも怒りを覚えている」
・・・つまりは、二人共に怒っているという訳か。
でもそんなのは。
「お節介、だとでも言いたいのだろう?」
声が出ないのは、ある意味幸いなのかもしれない。
でなければ今頃、子どものような喧嘩をしていたかもしれないから。