第3章 後編
ユーリは警戒を隠さずにレオンハルトを見つめていると、彼はゆっくりと口を開いた。
「今から10年ほど前に、僕は父に連れられて帝国を訪れたことがあるんだけど、ちょっとその時迷子になってね」
レオンハルトは穏やかに語りながら、慣れないユーリを自然にリードしていた。まるで最初から踊り慣れているかのような、そんな錯覚すら覚える。
けれど、今はそれどころではなかった。
「通りがかりの兵士に見つけてもらって父の元へ案内してもらう途中だったかな、不思議な歌が聞こえたのは。そして歌のする部屋の前まで来た時、扉の隙間からあなたとアーデン殿が見えたんです」
リードされるがままほユーリの頬に手を当てると、彼は恍惚とした表情で呟いた。
「あの時のあなたはとても美しかった」
もちろん、今のあなたも十分魅力的ですが。
レオンハルトのその言葉に、ユーリはゾッとするような悪寒を感じた。
確か彼は神話を研究してて、神を探し出し…その後は?
「さて、あなたはなぜ、10年もの歳月を得ても尚、姿が変わらないのでしょう?」
もしかして、神様と何か関係あるのかな?
穏やかな笑みを浮かべているのに、どこか底知れない狂気を孕んでいた。
ユーリは一番聞かれたくない内容に息を詰まらせた。
掴まれた手が冷たく感じる。
何か言わなければと口を開くが、言葉が出てこなかった。
ユーリが消えた10年間は、帝国にいるうちは適当に誤魔化すことができた。なんだかんだでアーデンの私室に閉じ込められていたし、世界が生まれ変わった後も帝国の人とほとんど関らず、そのまま旅に出た。
恐らく、アーデンも裏で色々やっていたのだろうけれど、このことを追及されることは一度もなかったのだ。