第3章 後編
「ユーリさんは、どちらのご出身ですの?」
ユーリがスープに口を付けると、突如話題を振られた。
顔を向ければ、王女のにこやかな笑顔。
しかしその質問はアーデンとの関係を探りたそうだった。
「…私は、孤児のようなものでして、出身は分からないんです。世界を転々と旅をしていますし」
ユーリはスプーンを置くと、曖昧な笑みを浮かべる。
ユーリの言葉に王女は小首をかしげた。
なぜあなたのような人がアーデンとお知り合いに?そう目線が語っていたが、露骨に聞いてくるような真似はしなかった。
「まあ……お若いのにご苦労なさってきたのですね。ではアーデン様とは旅の途中でお知り合いに?」
「いつから一緒にいるのか」「どちらが先に声をかけたのか」「なぜ彼女なのか」——レティシアは一つの質問に複数の意味を詰め込むのが巧みだった。社交界で鍛えられた技術だろう。
微笑んで頷いたが、追撃の手は緩めなかった。
レティシアの質問にユーリは曖昧に答えるしかなかった。
アーデンも当たり障りない内容でフォローしてくれるが、できればこれ以上深堀して欲しくなかった。
「アーデン様のような頼もしい方とご一緒の旅なら、さぞ心強いでしょうね。——わたくしも、あの時アーデン様がいなければと思うと…」
レティシアが胸元にそっと手を当てた。震える仕草——演技か本心か、判別が難しかった。
「あの瞬間、本当に死を覚悟しましたの。でもアーデン様の姿を思い出し、きっと大丈夫だとそう信じていたんです」
王女の頬がうっすらと赤く染まった。
グラスのワインを一口含み、視線をアーデンへ向ける。
「アーデン様のような方がこの国にいてくれれば、何も心配することはないでしょうね」
「それは買いかぶり過ぎだと思うけど」
「そんなことはありませんわ。ここは小さな国ですが、あなた様の話はよく入ってくるんです。わたくし、強い殿方に弱いんですのよ」
冗談めかした口調だったが、「弱い」ではなく「惹かれる」と言い換えても通じる言葉だった。給仕の一人が皿を取り落としそうになったのを、隣の給仕が肘で止めた。