第3章 後編
アーデンはユーリの一連の動作をみて、おやっと思った。
会話の内容自体は違和感がないが、明らかにユーリの様子がおかしいのは長年の付き合いから分かった。
「…そりゃそうだ。王族の誘いを断ったら外交問題になりかねない——って、外交もなにもないんだけどさ、今のオレたちは」
元帝国宰相と正体不明の同行人。どこの国にも属さない二人だからこそ、逆に気楽に断ってもよかったのだが、今更である。
それよりも、アーデンはユーリの心情の方が気になった。
どうせ、このままアーデンと一緒にいていいのかとでも思っていそうだ。
確かに二人の始まりは純粋な好意からきたものではないし、過去にそれなりの絆で結ばれていたが、愛を囁き合った仲でもない。
――さて、どうしたものか
アーデンは今更身を引こうとでも考えていそうなユーリに、どう分からせてやるか考えを巡らせる。
――まぁまだ何も確証はないから、少し様子をみるか
アーデンは一瞬不穏な空気を纏わせたが、すぐに正気に戻った。
取り合えずユーリがまた急にいなくならないように見張ることに留めて置いて、落ち着いたら話を聞こうと考え直したのだ。
帝国で長年培ったポーカーフェイスがそう崩れることはない。
ましてや嫉妬に狂うことなどありえない。
そう、彼は思ったが、相手があのユーリなので、どことなく不安な気持ちが消えることはなかった。