第3章 後編
ユーリは悩むように視線を彷徨わせたが、断る理由が見つからず、王女の誘いなので、大人しく従った方がよいと判断し、承諾した。
すると王女はぱっと花が咲いたような笑顔を見せた。
「嬉しい!では明日の夕刻に使いの者をお宿に向かわせますわね」
その後、三人は当たり障りのない会話をした。祭りの話、王都の名所、——レティシアは話題を振りながらも絶えずアーデンに話しかけ、時折ユーリにも話を振るという器用さを見せていた。
そうして時間が経ち、二人が王城を辞した頃には城下町は暗闇に染まっていた。
「はぁー。疲れた」
アーデンは城門を出たところで大きく伸びをした。
本気で疲れているわけではないが、ただ愚痴が言いたかったのだろう。
アーデンは歩きながら、少し声を落としてユーリに近づいた。
「あの王女、なかなかしたたかだね」
宿への帰り道、闇夜が石畳を黒く染める中、通りにはまだ祭りの余韻が残っているが、人通りはまばらになりつつあった。
「それは…そう、なんでしょうね…?」
ユーリのリアクションにアーデンは肩眉を上げる。
というのも、アーデンはレティシアの対応をしている傍らでユーリの反応をずっと伺っていたのだ。
そして不謹慎かもしれないが、ユーリが嫉妬でもしれくれればと思っていた。
しかし返ってきた反応は予想通りというか、いや、少し予想に反したものだった。
ユーリの表情は少し困惑したものであり、何かを考え込んでいるようだった。
ユーリの珍しい表情にアーデンは問いただすか迷い、結局別の話題を振った。
「…ま、晩飯が豪華なのは悪くないけど、2人の時間を取られるのはちょっとなぁ」
アーデンは足を止めて、ユーリを振り返った。
黄金の瞳がユーリを捕らえ、何かを探るように視線を向ける。
ユーリは、王女の誘いを断って外交問題にでも発展したらどうするんですかと、苦笑してそっと目線を外した。