【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第6章 冬霞
光太郎としては、絶対とまでいかなくとも自信があったのだろう。
久しく本気の手合わせをしていなかったが、若利と遜色ないほど身長が伸びたし逞しくもなった。
速さでは負ける気がしていなかったし、力でもそうだと思っていた。
それなのに・・・
「クソ!! やっぱりウシワカの方が上なのかよ!!」
防具を取りながら、光太郎は悔しそうに吐き捨てた。
試合場ではすでに若利に手合わせを請う門下生が行列を作っている。
“力試し”とばかりに挑んでくる相手を秒殺にしていく若利を見て、ただただ悔しさしか感じなかった。
八重がどうのという話ではない。
単純に及ばない力の差が悔しかった。
「───八重様、申し訳ございません。少し・・・席を外します」
赤葦はドスドスと足音を立てながら道場を出ていく光太郎を見て腰を浮かせた。
あの不貞腐れ方は良くない。
「旦那様の様子を見てきます。少しだけお一人にしてもよろしいでしょうか?」
「え? ええ、もちろん」
ここには黒尾がいるし、天童もいる。
できることなら八重を一人にしたくないが、光太郎のことも心配だ。
不幸中の幸いというべきか孤爪と白布も見物にきているから、万が一、黒尾と天童が八重にちょっかいを出してもあの二人が止めてくれるだろう。
まったく煩わしい人達だ・・・
黒尾も天童も八重に余計なことを吹き込みかねない。
あの二人は“知り過ぎて”いる。
「八重様、くれぐれも黒尾さんと天童さんには気を付けてください」
「赤葦は本当に心配性なのね」
「貴方と旦那様のことに関してだけは、心配し過ぎることはないと思っていますので」
それも家令の務め、とばかりに冷やかに見下ろす。
そして赤葦は八重を道場の安全で人気の多い場所に移動させてから、光太郎の後を追って裏庭の方へ走っていった。