【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第6章 冬霞
「どちらが優れているのかは、私には分からない」
八重は隣に座る赤葦を見上げ、ニコリと微笑んだ。
「でも私は光太郎さんの方が好きよ」
その言葉をどう受け止めたのだろう。
赤葦はほんの一瞬、眉間にシワを寄せた。
両ひざの上に置いた手で握りこぶしを作ると、皮膚に血管を浮き立たせる。
「・・・・・・・・・・・・」
───駄目だ、貴方がその言葉を言ってはいけない。
貴方が選ばなければならないのは・・・
「・・・赤葦? どうしたの?」
不穏な空気を悟ったのか、八重が眉をひそめたその時だった。
竹刀が激しくぶつかり合う音、そして、板を踏み抜かんばかりに床を蹴る音。
ほんの一瞬を突いて、若利が打突の機会を作り、光太郎の面に向かって打ち込んだ。
素人目には残像しか見えない常人離れをした速さに一瞬迷ったのか、光太郎は竹刀を開いて居付いてしまっている。
チリン・・・
どこかの軒下に吊り下げられたままの風鈴が、季節外れの音を出した。
勝負が決まる瞬間というものは、まるで空気が凍ったように静まり返る。
孤爪の猫のような瞳が光った。
黒尾が悔しそうに顔を歪めた。
天童が半分だけ瞼を落とし笑った。
赤葦が唇を強く噛んだ。
そして───
パァン!!!!
面への打突の勢いそのままに光太郎の右脇を抜け、そのまま残心。
勝負はあった。
「一本!!!」
若利を指した師の手。
その時光太郎は悔しそうに右足で強く地団太を踏んでいた。