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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第6章 冬霞




普通の剣士ならばここで負けていただろう。
しかし、二人の竹刀はガチンという真剣がぶつかるような音をたてながら再び交差する。


「光太郎さん!」


八重が叫んだのと同時に、光太郎は右足を後ろに素早く引いて構えた。
その恐ろしいまでに流麗な重心移動を見て、笑みが浮かんだのは赤葦の顔だけではない。


「木兎・・・」


久しぶりに竹刀を交えた若利の口元も上がっていた。

咄嗟に身体を低く沈め、竹刀を反時計回りに回して若利の打突をけん制する光太郎の瞳は金色に輝いている。

ああ、これぞ猛禽類の獰猛さよ。

容易に踏み込めば、“梟”は一気に“白鷲”の喉元に噛みつくだろう。


「旦那様は動作の速さ、重心移動の滑らかさがずば抜けている。筋肉の柔らかさゆえでしょう」

真剣に剣道に向き合っているからこそ。
誰よりも鍛錬をし、誰よりも自分に厳しいからこそ。

竹刀を持つ光太郎は強く、美しい。
そして何より・・・

楽しそうだった。


「赤葦・・・さっき貴方が言った言葉の意味が私にも分かったわ」


“私は、剣道をしている時の旦那様を見るといつも心身が震えます”


「私も光太郎さんを見ていると心が震える。身体が震えてくる」


それまでジッと試合場を見つめていた赤葦の目が初めて八重の方を向く。


「若利様が強いのは分かるけれど・・・光太郎さんに勝って欲しい」

「八重様・・・」

「若利様も剣道をすごく好きなのは伝わってくる。才能に慢心せず、努力をされているだろうことも」


光太郎も若利も、世が世ならば大剣豪として名を馳せただろう。
でもこの明治の世で剣道は単なる嗜みの一つにしかない。
それでもこの二人は真剣に剣道に向き合っている。


「光太郎さんから感じるのは、本当に“楽しい”と思って剣道をされているということ」


だから見ていて楽しい。
若利の剣は圧倒的で恐怖すら感じるけれど、光太郎の剣は心が躍る。








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