第21章 ココロ、重ねて
「じゃねぇと、そろそろ一織なんかは拗ねるぞ?」
この甘えん坊で、寂しがり屋で、だけど誰よりもどんなことにも頑張りを見せる小さなやつに、一織は本当は構いたくて仕方がないんだから。
・・・一織だけじゃねぇな、オレも、いや違う!
みんなだ、みんな!
っていうか、TRIGGERのトコの社長もスゲー事を言うんだな。
そんな過酷とも言える社長からの言葉をしっかりと心に刻んできた愛聖だからこそ、どんなに泣いたって立ち上がる事が出来るんだろうな。
オレも・・・見習わねぇと、だ。
フッ、と小さく鼻で息を抜いて、風邪ひいたら困るから早く寮に入ろうぜ?と冷りとする肩を叩いて、愛聖を探しに来た理由を思い出す。
「そうだ!風呂だ風呂!環がお前に風呂の順番来たぞって言うのにお前を探してたんだった」
ほら行くぞ?と言いながら愛聖の手を引いて立ち上がらせ、その手を離すことなく、一緒に歩き出す。
「撮影中なのに風邪でもひいたら大変だろ?いろいろあるかもだけど、そんなの毎回風呂で洗い流して身も心も綺麗さっぱりしちまえばいいさ。他の誰がなんと言おうと、愛聖が甘えん坊の頑張り屋だってオレ達はみんな知ってるからよ」
『甘えん坊、って』
クスッと笑いながら愛聖がオレを見る。
「ん?間違ってねぇだろ?オレは知ってるぞー?熱出して一織に担がれながら病院行った時とか、その後の事も、それから、」
『わーっ!三月さんストップ!』
出逢ってからの色々を話し出せば、愛聖は慌てながらそれは過去の事だから忘れて!と顔を背ける。
「忘れちゃダメだろ。あれはオレ達みんなが忘れられない思い出のひとつだからな」
そう言って笑い返せば、愛聖は三月さんには敵いません・・・とまた小さく笑った。
「叶うわけないだろ?オレはお前公認のお兄ちゃんだからな」
エッヘン!と胸を張って見せれば、それはそれで愛聖が笑う。
お兄ちゃん。
それは万里さんにはさすがに勝てねぇけど、それでもその立ち位置がいまは心地良く感じるのは間違いじゃない。
「ま、とにかく最優先は風呂!わかったな?」
『はーい』
そう笑い合って、明日からも頑張れ!と背中を押してやる事がオレの今の役割のひとつだなと、繋いだままの手をギュッと握り締めた。