第6章 秋は夕暮れ①
その後、彼女に会うことはなかった。
たまに、あの娘はどうしているだろうと思い返してみたけれど、いつのまにか記憶の隅に行ってしまって、高校に入る時にはもう忘れてしまっていた。
だけど偶然、同じ高校に入学して同じクラスになった。
「香田沙織」
初めての点呼でその名前を聞いた時、神様っているんだなと思った。
だけど彼女は別人のようになっていて、水泳も辞めていた。学校にもめったに来ず、学校では彼女に関する悪い噂が飛び交った。
そんな噂を信じていたわけではなかったけれど、彼女に会えないことが辛かった。
たまに話しかけてみても、彼女はこちらを見もしないで去っていった。
正直焦っていたよ。
誰とでも仲良くなれる俺が無視され続けたから。
俺らしくない?そうかもな。
それが変わったのは1年も終わりに近づいた頃だった。
部活終わりに備品を買いに行った駅前で新開の耳に声が聞こえた。
「だからさぁ、アンタはアイツのバイト先を言うだけでいいんだって!」
「言えない!」
あれ、、、この声は。
聞き覚えのあるその声の出所を辿って、新開は近くの路地裏を覗いた。
岩元さん?
クラスメイトの岩元佳奈がガラの悪い女子達に囲まれていた。
「ハァ?ここまで来て何言ってんの?」
「言うこと聞かないとどうなるか分かってるよなぁ?!」
「、、、それでも!言いたくありません」
喧嘩?
女子達の背中に隠れて小柄な佳奈の顔は見えなかった。
「だから香田を庇って、アンタに何の得があるんだっつー話だよ!」
「得なんてなくていい!」
香田さんの話?
そういえば岩元さんって、たまに香田さんといるような。2人は友達?
新開の頭にある考えが浮かんだ。
ここで岩元さんを助けたら、
香田さんと繋がれるんじゃないか。
そんなことが一瞬頭をよぎる。
「沙織ちゃんは私の友達だから!あなた達に沙織ちゃんの大切なものを壊させたりしない!!」
「アンタ馬鹿なの?香田はアンタのことなんか友達じゃないって言ってたんだよ?」
「、、、それでも、私は沙織ちゃんの友達でいたいから、、、ここで引き下がったら、沙織ちゃんに顔向けできなくなる!!」