第2章 砂漠の月71~150
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上杉の家で晴久用のチョコを作った月子は、それを鞄に忍ばせて学校に来ていた。
市の要望で元就にも気付かれないようにと細心の注意を払っていたが、果たしてそれが功を奏したのかは月子にはわからない。
今日はそれぞれで帰ることになっている。月子はいつも通りに授業を受け、お昼はクラスメイトたちと食べて過ごしあっという間に下校時刻となった。
晴久が教室に迎えに来たので荷物を手に駆け寄ると慣れたように手を繋いでくるので、月子は場所を忘れてそれを受け入れると昇降口に着いて靴を換える時になって離れた手でようやく気づき顔を赤くした。
「月子?」
「あ……えと、な、なんでもない!」
「そうか? 顔赤いぞ?」
「っ! それは晴久さんのせいっ!」
頬の熱を指摘されて頬を膨らませながら返した月子は、靴を履きかえると晴久を待つ。晴久もすぐに靴を履きかえて月子のそばに来ると手を差し出す。月子は躊躇したが、先ほどまでつないでいたことを思い出していまさらだと思い至ると羞恥に頬を染めながらもはにかんで差し出された手に自分の手を乗せ指を絡める。
「晴久さん、今日、夜ご飯作りに行ってもいい?」
「ん? ああ、いいけどどうした?」
「今日は何の日?」
「今日? 何か特別な日だったか?」
学校から少し離れたところで尋ねた月子に晴久が目を見張り、珍しそうに月子を見て問えば月子は悪戯を思いついたような表情で聞き返す。
晴久は今日、クラスメイトがみんな一日そわそわとしていたのにも気づかず、バレンタインの存在を忘れているらしい。
月子はクスリと笑うと、帰ってからのお楽しみですと答える。そこにはもちろん、夕飯の買い物に立ち寄った店で特集が組まれているだろうことも考慮に入っている。
答えを濁されて若干不満だった晴久も何が食べたいかという話を振られ、一緒に夕飯が出来るならと思考を切り替えると献立のリクエストを考えながら買い物先に向かう。
「ああ、今日はバレンタインか。珍しく市が渡してこなかったな」
「うっ、気を遣って貰ったのかな……。その、晴久さんがこういうの好きじゃなかったらね、お夕飯作らせて貰ったら私は家に帰るから……」