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砂漠の月

第2章 砂漠の月71~150


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年越し蕎麦も食べ終え、月子は晴久に、市は元就に手を取られ初詣に選んだ穴場だという神社に来ていた。
指を絡めて女性に歩調を合わせて歩いていると、周囲からは羨望と嫉妬の視線が向けられる。
晴久と元就は僅かに機嫌が下降したが、それに気付いた月子が首を傾げ隣に並ぶ晴久を見る。

「晴久さん、どうしたの?」

顔を覗き込まれて、二人きりの時にだけ聞ける呼び方をされて晴久は一瞬固まる。
思わずまじまじと月子を見返した晴久に、月子の方が頬を染めて視線を彷徨わせてしまう。
市と元就は隣を歩いているが何も言わず元就だけは僅かに呆れた視線を向けているが、晴久も月子も気付いては居ない。

「その……今は親しい人が市先輩と兄さんだけだから、晴久さんのお願いなのに、いつもつい敬語になっちゃうから……ダメだった?」
「ダメじゃない、嬉しい」

不安そうに問われて、微笑んで即答した晴久は繋いでいない方の手で月子の頬をするりと一撫でする。
淡く染まっていた頬がふわりと濃く色づき、恥ずかしそうに目を伏せながらはにかんだ月子がきゅっと繋いだ手に力を込める。
隣で晴久と月子が二人の世界に浸っている頃、市と元就も二人でひそひそと話しては市が頬を染め、元就がその姿を愛でていた。

「も、元就?」
「どうした?」
「て、手っ!」
「何もしておらぬが?」
「うぅ……」

するりと手の甲を撫でられ、くすぐったさにピクリと肩を揺らした市が何度も往復するそれに名前を呼ぶが、素知らぬ顔で元就に問い返されて何と言えば良いかわからず市が唸る。
恥ずかしくて元就の肩に顔を伏せる市に、元就が頬を寄せる。
この二組の後ろに居る参拝客は居心地が悪そうにしていたり、興味津々に眺めていたりとそれぞれの反応を見せているが、今更視線を気にしない四人である。
そうして待っている間に年が明け、四人は互いに新年の挨拶を口にする。

「あけましておめでとうございます」
「おめでとう」
「今年もよろしくお願いします」
「ああ」

四人でそんなことを言いながら賽銭箱の前に辿り着くと、それぞれが賽銭を手にして放り込み作法に則って手を合わせる。
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