第2章 砂漠の月71~150
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「今日は部屋でのんびりするか」
「え?」
「ん? 外、行きたいか?」
「あ、いえ、そうじゃないで、んっ?!」
ある日、晴久が迎えに来て家を出てきた月子は部屋に連れて来られて、言われた言葉にきょとんとする。
思わず漏れた声に晴久が反応して、慌てて否定しようとした月子は言葉を言い切る前に晴久が自分の唇でそれを塞ぐ。
驚きに目を見開く月子に、晴久は一瞬唇を離すと再び啄むように口付ける。
「んっ……ふっ……」
「今日は敬語禁止な。使ったらさっきみたいに仕置だ」
「うぅっ……不意打ち、ダメ……」
ちゅっとリップ音を立てて離れた晴久の言葉に、真っ赤な顔で涙目になりながら睨むとニッと笑い返されて月子は拗ねてそっぽを向く。
それでも、禁止と言われてなんとか敬語を崩せば、今度はご褒美だと頬に口付けられる。
二人で座っていたのはベッドで、月子がもう止めてと言うように抱きつくと晴久は楽しげに抱きしめて膝に抱き上げる。
横抱きにされて、月子は頬を染めながらもチラリと上目遣いで晴久を見る。
「ん?」
「なんでもない……」
柔らかい笑みを向けられて、月子は何をどう伝えたら良いかわからなくなって甘えるようにその首元に顔を寄せる。
すりっと猫のように甘える仕草を見せる月子に、晴久は頭を撫でながら器用に背後に倒れこむ。
「は、晴久さんっ! 私重い」
「どこがだよ。軽いくらいだろ?」
「うそ……」
「ほんと。しかし、仕置だって言った途端に敬語直ってるな」
「うっ……だって……」
「嫌か?」
「……ずるいです」
「ふっ、月子可愛い」
月子を身体の上に乗せたまま転がっている晴久は、なんとか降ろして貰おうと奮闘する彼女を捕まえたまま思わず不満を漏らせば、抱えた身体の熱さが増した気がして表情が緩む。
しかし、嫌がられているのかと無意味な不安が過ぎりつい聞いてしまえば、頬の紅みを増した月子に睨まれながらも敬語を使われて破顔する。
自分がいかに単純かと思いはするが、偶には誰の目も気にせず彼女を愛でたいのは男の性だろう。
「んっ……もっ、むりぃ……」
「ん、悪い」