第2章 砂漠の月71~150
そんな甘い時間も時々過ごしつつ、夜になって市は元就に手を引かれてとあるホテルのレストランへと連れて来られていた。
そのレストランは予約が一年以上待ちなどと言われている場所で、ホテルの部屋はパークのキャラクターがそれぞれモチーフにされていたり夜景がきれいで、更にレストランではパレードが間近で見られるような配置になっていて花火も眺められるという人気スポットだ。
「……ここ」
「昼の様に隣に座っては居らぬで、きちんと自分で食べろ」
「わ、わかってるっ! そうじゃなくてっ!」
「……其方が喜ぶと思ったが、気に入らぬか?」
「そうじゃなくてっ! もうっ、もうっ、ほんとずるいっ!」
市としては夕方まででパークは終わりで自宅に帰るか外のレストランかと思っていた所に、連れてこられたのがこのレストランだったために色々と一杯一杯になってしまったのだ。
市の思うのとは違う様子に他人には判らないが市には解る程度に不安そうな表情を見せた元就を見て、市はぶんぶんと頭を横に振ると拗ねるような言葉しか紡げずぎゅぅっと繋いでいた手を握るしかできなくなった。
嬉しいとか色々と思うところがあるが、ここまで準備して貰って気に入らないわけがなく、漸く衝動を堪えて出てきた言葉はあまりにもシンプルだったが元就を破顔させた。
そうしてパレードを見ながらの食事が終わり、デザートが出た頃、元就は市へと声を掛けた。パレードも残すは花火のみである。
「市」
「なあに?」
パレードと花火に視線を向けていた市は、元就に呼ばれて振り返る。テーブルに置いていた左手を取られると、真剣な表情の元就に目を瞬かせながら手を取られたまま身体を元就へ向けた。
しばし見合った後、するりと指に冷たい感触がなぞるのを感じて視線を向ければ、シンプルながらに華やかな白百合をモチーフにしたかの様なシルバーリングがあり目を見開く。
そのまま左手を返されて、その上にシンプルなリングを置かれて更に目を見開くとクツリと喉の奥で笑う音が聞こえた。
「もと、なり?」
「嵌めてくれるか?」
恐る恐る、確認するように名を呼ぶ掠れた市の声に目を細め、穏やかな表情で元就が乞う。今世ではまだ高校生の身で、遠い先の約束をするのは珍しかろうが自分たちには関係なく。