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砂漠の月

第2章 砂漠の月71~150


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晴久と月子が街中でデートをしている頃、元就と市は某テーマパークでアトラクションの真っ最中だった。

「きゃーーーっ!」

楽しげに歓声を上げて乗り物の下りを楽しむ市と、その横顔を眺めつつ無表情に乗っている元就は後から撮られていた写真を見ると皆が微妙な反応をするかもしれないが本人たちは至って楽しんでいた。
市が乗りたいと言っていた乗り物すべてに乗り終る頃、丁度昼の時間になり市は元就に手を引かれてパーク内を歩いていた。
所々で繰り広げられるキャラクターたちの大道芸や、パーク内のスタッフによる清掃中のお遊びに足を止めては嬉しそうに歓声を上げる市とそれを眺め満足気な笑みを浮かべる元就。
このテーマパークは市が行ってみたいと言っていた場所だった。クリスマス当日ではさすがに貸し切りなどは無理な話だが、元就はその分パスの発行や中のレストランで開催される公演のチケットなどを抑えていた。
現在は昼食を取りながらの公演が見えるレストランへと移動中である。予定時間からはまだかなり余裕があるし、席も予約はしているがこうして足を止めて眺めたりしていくのを見越しての移動中である。

「元就、楽しい?」
「ああ、楽しそうな其方を見るのは楽しいな」
「うっ……私一人はしゃいで、楽しくない?」
「馬鹿者、今我は何と言った?」
「あいたっ!」

ふと我に返った市が、自分に付き合っているだけで好きでもないだろうと思う元就の様子に気づき、その真意が気になって声を掛けた。
柔らかい笑みを見せ、髪を撫でながら自分の反応が楽しいと言う元就に市が不安になって重ねて聞くと加減したデコピンが来た。
ペチンと弾かれて、思わず声を上げて繋いでいない方の手で額を抑えると、苦笑を浮かべた元就にまた髪を撫でられる。
市が首を傾げると元就は小さく息を吐きながら言う。

「確かに我はこういう場は好きではない。だからといって、市と来るのが嫌だと言ったことは一度もないはずだが?」
「……そう、いえば」
「つまりは、そういうことだ」

市と居るのが楽しい、と素直ではないが察せられる程度には砕いて伝えてくれる元就に、頬を紅くする。
繋いだ手にきゅっと力を込めると同じだけの力で握り返されて、市は頬を染めたままふんわりと元就の好む笑みを浮かべた。
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