第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「…良かった」
ここにきて漸く、数日間に渡る血のにじむような努力が報われたと思った。
いや実際に血がにじんだんだが。
ユーリは安堵して気が抜けたのかここにきて初めて笑った。
それを見てローは一体どんだけ気にしてんだと思った。
別にローは美食家でも何でもないのでそこまで気にする必要があるのかと、疑問に思ってたのだ。
余程変なものが出てこない限り、ユーリの作る料理に口出しするつもりも文句を言うつもりもなかった。
「じゃぁ今度からはローが作ってね!」
「なんでそうなる」
旨かったと言ったのになぜローに押し付けようとするのか。
まったくもってユーリの考えが分からない。
まぁこいつが食べたいというなら作ってやらなくもないが、正直料理は面倒だ。
「そういえば、おまえはいつなんだ?」
ユーリがケーキを完食し満足気にソファーで寛ぎ始めた頃、ローはふとユーリの誕生日を知らないことに気づいた。
今まで誰かの誕生日を気にしたことはないが、苦手ながらに色々してくれたようなのでこのまま知らないのも気が引けた。
「ふっふっふ、それは秘密だ!」
ユーリはなんとも自慢げに答えた。
ちょっとまて誕生日を秘密にする必要がどこにある?
ローは眉をひそめた。
「いいじゃないですか、誕生日の1つや2つ秘密でも」
「おれに隠し事とはいい度胸じゃねぇか」
「えっそこ怒るところ!?」
どこまで本気か分からないが、本当に秘密にする気らしい。
ローは一体なんなんだと思ったが、ふと彼女の過去を思い出した。
「……まさかおまえ」
自分の誕生日が分からないのか?
導き出した可能性に、ユーリは苦笑した。
そしてユーリのその表情を見て、ローは盛大にため息を吐いた。
未だにローに対して隠し事をするのも気に入らなかったが、それにすぐ気づかなかった自分自身にも腹が立った。