第1章 前編 時の彼女と死の外科医
テーマパークの敷地に入った瞬間、ユーリはリミッターが外れたかのようにはしゃいでいた。
まるで散歩の途中でリードの離れた犬のようだ。
そんなユーリを若干引き気味に見ていたローだったが、本当に楽しそうだったので、やはり連れてきて良かったと思った。
最初は一緒に行動していたが、絶叫系オンパレードなので途中からローは辞退し近くで待つことになった。
例え1人でも全力で楽しんでいるユーリに、ローの心も自然と暖かくなった。
その後も2人で色々見て回り、テーマパーク恒例のお化け屋敷にも入った。
ユーリ一人で。
一応リアルで怖いと評判らしいが、何事もなく出てきたユーリ。
こいつは苦手なものがないのだろうか。
ユーリが怖いと言えば一緒に行こうとしてただけに、少しがっかりした。
「おまえ、怖いもの何もねェのか?」
「怖いもの?…うーん、なんだろう…」
二人は少し休憩する為にベンチに座っていた。
ユーリの手には大きなクレープが握られており、なんとも美味しそうに頬張っていた。
「気持ち悪い虫とかは怖いですが」
ローはユーリの口周りについていたクリームを取ってやりつつ話に耳を傾けた。
傍から見れば立派な恋人同士なのだが、そうじゃないから不思議なものである。
「あぁ、後1人ぼっちは怖いですね。何もない場所で1人で過ごすのは意外と怖いものですよ」
ユーリは冗談のように答えたが、その表情に一瞬影が落ちたのに気づいた。
ローは深く追求していいものか迷ったが、そのうちユーリから話してくれるだろうと思い、それ以上は聞かなかった。