第1章 前編 時の彼女と死の外科医
「なんですかその顔は。言っておきますが皆さんと出会って今まで、私の私物は一切ないんですよ。下着すらないってどういうことですか、また露出魔にでもさせたいんですか」
ローの沈黙をどう受け取っていたのか分からないが、ユーリは憤慨していた。
そんなユーリをローは静かに見つめると、なぜだろう…胸に暖かいものが流れるような感じがした。
ユーリのその性格というか雰囲気というか、周りの空気を和ませる力があるようだ。
更にローはユーリを気に行っている。
というか好きという感情まで発展しているため、ユーリの一挙一動に心が満たされる感じがするのだ。
まだ両想いになったわけではないが、これが幸せということなのかとローはしみじみと思っていた。
「くそーまさかそんなに引かれるとは。最早私は服すら与えることは許されないのか」
そして憤慨していたかと思えば急に落ち込み始めるユーリ。
そんなコロコロ変わる表情もローは好きだった。
ローは隣に座っているユーリの手を掴むと、思いっきり引っ張った。
「どわっ!?」
なんとも色気のない声でローの腕の中に納まったユーリ。
最初は状況が理解できず呆然としていたが、すぐに離れようともがいていた。
しかし力でローに適うはずもないことは分かってるし、能力も使う気はないので、渋々と大人しく腕の中に納まった。
ユーリは何か理由があっての行動だと思い、ローから口を開くのを待っていたが、何時までも沈黙が続いた。
そして再度だんだん恥ずかしくなってきたのじりじりと抵抗し始めた時、頬に手をあてがわれ影が落ちた。
「……っ」
静かに口づけを交わす二人。
風に揺れる草木の音が響く中、啄むように繰り返される軽い口づけ。
2人の間には言葉はなく、ただ静かな時間が流れていった。