愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第12章 以毒制毒
和也side
坊ちゃんにが階段を上りきるの見届けてから、俺はついさっきまで惨劇と化していた大広間へと入った。
でもそこにさっきまでの騒然とした空気はどこにもなくて、後始末に追われる使用人達だけが、黙々と身体を動かしていた。
俺はその中に風間の姿を見つけると、駆け寄ってまだ青ざめた顔をしている肩を叩いた。
「坊ちゃんはどうだ?少しは落ち着かれたか?」
「ああ、多分…。それより旦那様は?そらから澤さんはどうなった?」
捲し立てる俺に、風間は困り顔を更に歪ませて、首を横に振った。
そいて、
「一体全体どうなっているんだかさっぱり…」
そう言ったきり顔を伏せ、桶に汲んだ水で汚れた雑巾を濯いだ。
そりゃそうだろう…
自体を把握しているこの俺だって、何がどうなっているのか、未だ分からずにいるのだから…
せめて澤さんがどうなったのかだけでも、と思ったのだけれど…
無理もないか…
「和也かい?」
広間を出て、使用人部屋の方へと足を向けた俺を、愛しい人の声が呼び止めた。
「雅紀さん…。あの、智さん…は…?」
おずおずと見上げた俺の頬を、雅紀さんの大きな手がするりと撫でる。
「大分落ち着いたように見えたから、後は翔君に任せて私は松本の様子をね…」
そうか…
いくら智さんが原因で仲違いしているとは言っても、お二人は元々懇意にしていたのだから、潤坊ちゃんを案ずるのは当然と言えば当然か…
「ところで、松本と松本の父君のご遺体はどこに?」
「それが…。私も他の使用人に尋ねてみたのですが、どうにも分からなくて…。もしかしたら旦那様の寝室かも…」
それ以外他に考えられない。
「案内してくれるかい?」
「はい、でも、あの…」
どうしても智さんのことが気になった俺は、無意識に視線を階段の上へと向けた。
「智のことが気掛かりかい?」
俺の視線の意を察したのか、雅紀さん俺の顔色を窺うように覗き込んだ。
「安心おし?智のことは翔君に任せておけば良い。彼もあれでもう立派な大人だからね」
「そう…ですね。では、参りましょう。ご案内します」
俺は雅紀さんの先を行くように、旦那様の寝室へと歩を進めた。