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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第12章 以毒制毒



「…おれの、気持ち……?」

「見た…でしょう…、僕が何をしようとしてたか…」


彼は唇を噛んで…

それでも視線を外すことはなくて。


手を伸ばせばすぐそこに会いたくて堪らなかった人がそこにいるのに、その間には途方もない距離を感じた。


「父様を…、仇を討つ…つもりだった…?」

「…ごめん、なさい…」

「…どうして…謝る、の…」

「だって…あの男は、翔君の父様…だから…」

「でも…憎かったんでしょ…、殺してやりたい程…恨んでた…」


わかってる…


おれのその言葉で、涙で揺れてた瞳からは、ついに大粒のそれが流れ落ちた。

でも智はすぐにそれを手の甲で拭い

「…憎かった…、何もかも失くして…独りぼっちになって…」

真っ直ぐに…おれを見つめ、偽らざる気持ちを吐露する。


「何を頼りに生きていけばいいのかも…わからなくて、…復讐なんて…そんなこと、誰も望んでなかったんだって…気がつかなかった」

「どうして、そんなことを…おれに…?」

「それは…僕が、翔君の大切な人を殺めようとしたから…。あの人と同じこと…しようとしたんだ…。翔君に僕と同じ苦しみを…悲しみを味あわせてしまうところだった」

そこまでいった彼は声を詰まらせてしまった。


おれはじっと佇んでいる智を抱き寄せてあげなきゃって思うのに、身体が動かなくて…


すると彼は

「あの瞬間…僕は翔君のことを忘れた。大切な人なのに…大好きな人なのに。だからごめん…、僕は翔君の傍にはいられない…そんな資格ない」

ぐっと拳を握り、絞り出すようにそう言った。


どうしたらいいんだろう…


このまま智を連れ出してしまおうと思ってたのに、素直に抱き締めることさえできない。


今のおれたちに足りないもの…


それさえ埋めることができれば、迷うことなくその手を取ることができるのかな…?
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