愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第12章 以毒制毒
雅紀side
私は智の何を見てきたんだろう…
何年も傍に居たというのに、こんなにも激しい憎しみを抱えていたなんて露ほども思わなかった。
初めて智と出会ったあの時…
涙を流していた理由が漸く…解った。
幼かった智が全てを奪われて、たった一人になって生きていくことさえままならなかった中、唯一心の支えだったのが松本の父への復讐だった。
悲しみと憎しみだけが智を支え、生かしていた…
どうして私が気がついてやらなかったんだろう。
そのことに、もっと早くに気がついてあげられたならば、こんなに苦しい思いを抱き続けなくても済んだろうに…
あの頃泣けなかった感情を爆発させるように泣き噦る智を抱き締め、自分の浅はかさを悔いた。
「和也、済まないが智と二人だけにしてはくれないか…。君は翔君に着替えを届けてあげておくれ」
「でも……」
「お願いだ…」
私は智との時間を取り戻さなければ、
二人共…前には進めない。
「わかり、ました…」
和也は箪笥から服を取り、静かに木扉を閉めた。
外の騒ぎなど何も聞こえてはこない。
静まり返った部屋に、智の嗚咽だけが哀しく響いて…
「…智、こうして君を胸に抱く日が再びこようとは思ってなかったよ」
私の元を去っていった愛しい人
突然の裏切りの意味も…漸く理解することができた。
「私は君を愛していた…。心の底から大切に想っていた」
「…雅紀、さん……?」
「でも君が抱えていた悲しみが何なのか…慮ることなく、愛することだけに夢中になって。君を幸せにしたいだなんて思っていた自分が恥ずかしい。…済まなかった」
「そんなこと…っ、僕は雅紀さんに拾われなかったら、きっと野垂れ死してた…」
数奇な運命の巡り合わせで出会った私達…
そして運命という自縛の中にいた智に、それを成就させるための鎖を教えたのは私だった。
もう…それを断ち切らねば……
誰も幸せにはなれない