第3章 2 暖かな黒の中で
「、フフフ……。」
だから思わず、声に出てしまった。
「……アンリ、?」
「いや、すみません……本当に、仲が良いんだなって思ったら、どうしても。」
素直に言うと、きょとん、として私を見る二人。
あぁ、ハイデスさんもこんな顔するんだな、と思えるくらいには私にも余裕が出てきた。
「……おい、ジェイド。お前が妙に口を挟むからアンリに勘違いされたんだが?」
「それはそれは、失礼を致しました。」
変わらずに笑ってると、ばつが悪そうにハイデスさんが言う。
「……まぁ、こいつとは長い付き合いだ。ジェイドが魔法学校を出てうちに来たのはすぐだったな。」
「えぇ、ハイデス様が洗礼を受ける直前でしたね。」
えっと、洗礼って何だっけ……。色々ありすぎてちょっと前の記憶が吹き飛んでいる私は首を傾げてしまう。
そんな私に気が付いたハイデスさんは笑いながら説明をしてくれる。
「洗礼というのは、黒魔術の力を得るための試験の様なものだ。その時はまだ当主の座には着いていなかったし、勿論騎士にもなっていない。単なるガキの頃だ。」
そんな試験があるんだ。大変だなぁなんて私は軽く考えてしまっていた。
「あれ、でもジェイドさんの方が早く卒業したんですね。ハイデスさんの方が遅かったのはその試験の為?」
「あぁ、そうだ。アレはちょっと特殊だからな。通常の卒業課程をクリアした後に適性と本人の意思がある場合のみ試験を受ける為にまた数年学ぶといった流れだな。全ての者が黒魔術の力を得るとも限らないが。」
やっぱり難しい試験なのかな……それがどの程度のものなのか、私には分からないけれどハイデスさんってやっぱり凄い人なんだろうな。
「本当に、最後まで皆様反対していましたからね。次期当主が黒魔術の洗礼を受けるだなんて前代未聞ですから。」
「え、そうなんですか?」
「えぇ、あれはまともに帰って来た者の方が珍しい程ですからね。」
「まとも、というと……?」
ジェイドさんの言葉に驚いてしまう。
「死ぬんですよ。狂うと聞いた話もありますが、結局狂ったところで殺されます。」
難しいって、寧ろ生きるか死ぬかの問題なの?
試験の内容が気になるけれど、ちょっと怖い。
ハイデスさんはそんな危険な試験を受けようとした理由は何なんだろう……そう思った。