第3章 2 暖かな黒の中で
「ご、ごめんなさい……あの、……ほんと、は、恥ずかしくて……」
何でこんなタイミングで体勢崩したりするの、私の馬鹿……!
そう思いながらちょっと拒絶したような言葉を言ってしまったことに後悔しつつ、謝ってハイデスさんを指の隙間から見る。
澄んだ黒い瞳と目が合ったけれど、更に恥ずかしくなって茹でダコの如く真っ赤になっただけだった。
「っ、…アンリ……。」
支えられる腕の安定感が凄まじい。
流石、騎士様私ごとき支えるのなんて雑作でも無いのだろう……どうしよう心臓が煩い。
こんな状況で名前を呼ばれても素直に相手の事なんて見れはしないし、というかどうしてこうなった?
「……ハイデス様、お嬢様はあくまで貴方様のご息女だということをお忘れなさいませぬ様。」
冷静なジェイドさんの言葉にハッとする。
え、嘘全部見られてるなんて恥ずかしすぎ。
「ジェイド……お前出て行っても良いんだぞ。」
「お嬢様の身を案じてそれは承知致しかねます。」
茹でダコもとい、真っ赤な私をよそに話し始める二人に次第に冷静になってきた。とにかくこの状況はダメだと思う。
「あの、ハイデスさん……本当に、もう大丈夫ですから……。」
だから、離して欲しい。
そう言うとやっと身体が離された。
「すまない、大丈夫だったか?」
騒ぐ心臓は大丈夫じゃないけど、ケガとかそういうものはお陰さまで何一つ問題はない。問題なのは精神状態の方だ。
何を聞かれていたのかなんてものは記憶の彼方へ吹き飛んだし、顔が赤いのも早鐘を打つ脈も直らない。
「ちょっと、ビックリしました……。けど、支えてくださって有難う御座います。」
でも、ハイデスさんは私を助けてくれた訳なのだし、寧ろ悪いのは私の方なのだ。
「……お嬢様、無理してお礼なんて言わなくても良いので御座いますよ……?」
でも何故かジェイドさんには気を使われた。
一応、本心なんだけどなぁ。
「おい、お前さっきから失礼だと思わないのか?」
「お嬢様の優しいお心につけ込むような事をするからです。」
可笑しい。昼間はジェイドさんはそれはもうハイデスさんの事を慕っている雰囲気だったのに、変な言い争いばかりしている。
喧嘩するほど何とやら、ってこと?
でも、そう思うと確かに納得してしまうのだから何だか笑ってしまう。