第3章 2 暖かな黒の中で
「アンリ、今日は不自由なく過ごせたか?」
「ええ、寧ろ充分過ぎる程で……ジェイドさんに屋敷の案内をしてもらいました。」
ハイデスさんが帰って、食事を取った後折角だからと少しお話をすることになった。
仕事から帰ったばかりで、私が時間を取ってしまうのも悪い気がしたがハイデスさんが是非にということなので素直に受ける。
ゆったりとしたソファに隣同士に座って、ハイデスさんは終始和やかに微笑みかけてくれる。
「何、ジェイドお前……いつ名前で呼ばせるようになった?」
「……お嬢様がスチュワートと言うのは呼びにくいそうでしたので、それならばと。」
「ほう……。なるほど?……お前も案外隅に置けない奴だな。」
お菓子美味しいなぁ、なんて思ってたら何だか雲行きが怪しい。
ハイデスさんは後ろに控えているジェイドさんを見ているのでその表情は分からない。
「あ、あの……何かまずかったですか?」
「ん?そんなことはない。ただ、私がいない間に随分と打ち解けたようだからな……少し気になっただけだ。」
向き直るハイデスさんの笑顔は相変わらず格好いい。
「あ、はい。えっと、ジェイドさんには色々と教えていただきました。」
でも、何だか意味深に見えるのは私だけ?
気になってジェイドさんの方を見るとちょっと苦笑いされた。
ん……?これは、どういう意味?
「そうか色々か。……で、私にはその色々は聞いてくれないのかな?」
振り返った先にはハイデスさんがいて、いつの間にか距離が一気に縮んでいる。
「っ、わ、ハイデスさん、近いです……!!」
「アンリ、私は、君に頼って欲しいんだ。誰よりも、私が君を支えなければならない。分かるね?」
「あの、ジェイドさんに案内して頂いたのはダメでしたか……?」
「いや、そうではない……そうではないのだが。何、先を越された気がしてね。」
それは、どういう意味……?
思わずジェイドさんに視線で助けを求めそうになるその前に声が掛かる。
「ハイデス様、お嬢様がお困りです。」
おろおろする私にジェイドさんの助け船が渡された。
あぁ、私の言わんとすることをいち早く理解して行動してくれるジェイドさん、流石クロヴィス家のバトラー!