第3章 2 暖かな黒の中で
「私を信じてくれ、アンリ。」
耳元で囁かれる言葉、甘く優しいテノールと、爽やかな香りにドキドキして、きっと私の心音は全部筒抜けなんじゃないかってくらい高鳴ってる。
でも、それ以上の嘘みたいな安心感に包まれる中で、不意に胸がざわついた。
「、っ……」
思わず、身を離してしまった私に、焦って謝るハイデスさんが写る。
「、っすまない……。」
「あ、ごめんなさい……ビックリしちゃって……。あ、えっと、でも、凄い嬉しくて、本当に……。」
……何だろう、今の。
嫌だった訳じゃない。ハイデスさんの言葉を信じたい、寧ろこの人の側に……そこまで考えて、気が付いたら体が離れていた。
「いや、謝るのは私の方だ。急に抱き締めたりしてすまなかった……君の涙を見てしまったら、思わず……。」
眉を落とし、そう口にするハイデスさんの言葉にドクン、と小さく心臓が跳ねるのに胸の奥でざわざわした感覚が無くならない。
ビックリしただけ?
そうだよね、きっとそう。今もビックリしてドキドキしちゃってるだけだから。
「謝らないでください……あの、嫌じゃ、無かったんで……ただ、本当にビックリしちゃっただけなんで。その、養子のお話も受けさせて下さい。ハイデスさんがいいのなら……。」
「そうか、なら良かった……本当に、良いんだな?嫌だと言っても恐らく撤回はさせないぞ?」
「撤回だなんて、そんなっ……!」
焦る私に悪戯っぽく笑って見せたハイデスさんは、あんまり気にしていない様子なのでほっとした。
「アンリ、表面上は私と君は親子という事になるが、深く考えなくていい……どんな形でもいい。 ゆっくり、君と向き合いたい。勿論、君が望むなら私は父にだって、兄にだってなるつもりだ。……君の求めるものになろう。」
本当に、優しい人。
鳴りっぱなしの鼓動は静まらないし、それ以上に顔を見てハイデスさんの言葉を聞けない。
「どんな形であれ、君を守ることに変わりはない。私に、その権利を与えてくれて有難う。」
チュ、と聞こえたリップ音と額に触れた軟らかな感触に額にキスをされたのだと気が付く。
耳まで真っ赤になった私と、それを見て優しく笑っているハイデスさんの間にはきっと優しい空気が流れていたと思う。
こうして、この世界で私には勿体無い程素敵な家族が出来ました。