第3章 2 暖かな黒の中で
だが、万が一乙女としての症状が現れたら?
それがどのようなことなのかすら、未だに分かっていない存在。
そうなった時、私に彼女が守れるか?
そこまで考えて、己の考えの浅はかさに失笑する。
「……御前がそこまで執着するなんて、珍しいですね。まったく、なんて顔をしているんです?面白いので顔を上げてくれませんか。」
「、なっ…あ、顔……、??」
「ハハハッ、……いいですねぇ。中々に面白そうなのでこの件、協力して差し上げましょう。」
楽し気に笑う男の言葉を頭の中で反復することに精一杯の私はその言葉を理解するまで何とも情けない顔をしていたことだろう。
「嗚呼、今日はいい日ですね。これなら少し頑張ったかいがあったというものです。……ハイデス、いいものを見せていただいたお礼にその乙女の安全は最低限確保して差し上げましょう。」
完全についていけていない会話といっていいのか判断するには難しいそれはどうやら良い方向に進んでいるらしい。
「、何かいい方法が?」
「フフ、簡単なことです。その乙女を御前の養子にでもしてしまいなさい。出生が問題なら私が過去に捨てられたところを拾ってきたことにでもして。」
「私の、養子に?」
「ええ、早急にというのであればそれが適切かと。正式にクロヴィス家の養子になれば時期当主ということになる。そこまでいけば幾ら国王と言えど無下には出来ないでしょう。今現在天女としての症状が出ていないのならば早くその原因を探ることです。それまでは学園で彼女の身は守りましょう。」
「……間に合わなかったら?」
「安心なさい。打つ手はあります。かの国に奪われるようなことは絶対にありえない。」
「絶対に、か?」
「勿論。私が嘘を付いたことがおありで?」
「故意にならば幾らでも、な。」
「おや、そうでしたか?」
切れ長の目を細めたまま笑う、この漆黒の男を信じていいのだろうか。
しかし、今他に選択肢があるのかと言えば無いと言っていい。
彼女を助けるため、私一人では力不足だということは確かなのだから。