第3章 2 暖かな黒の中で
案内される中、一人これからどうするべきか考える。
陛下御一人ならば、天女についてこの先どうするおつもりなのか聞いた後、彼女が本当に天女なのか確かめ判断するつもりだったが……
はぁ、と重い溜息を吐く中、私は結局何も決められぬまま男の待つ扉の戸を叩くこととなるのだが、そこで目にした男の顔に妙に違和感を覚える。
「やっと来ましたか、ハイデス……。」
「城へついて真っ先にこちらに向かいましたが。」
遅いと言われる筋合いは無い筈なのだが客用カウチに深く腰を下ろす男は飽きれた様に私を見上げるのだ。
「そんなことは分かっています。」
さらりと流れる長い髪、気だるげに投げ出された長い脚は少なからず私という人間に敵対心の無い現れ。
全身を覆う程のローブを羽織ったまま向かいのソファへ座るよう促すその仕草に無駄はない。
大人しく腰を下ろしながら、無意識に自分が緊張していることに気が付く。
「……では、どのような意味で?」
「御前が此処へ訪れた件についてですよ。真っ先に向かうとも思ったのですが、案外人らしい心の方が勝っていたのでしょうかねぇ。」
「貴方にそのようなことを言われるとは、心外です。」
売り言葉に買い言葉、とまではいかないが決して親しい間柄の人間がする会話ではないことは確かだが、今の私にはそんなことを気にしていられる余裕はなかった。
この男は一体どこまで知っている?
「フフ、冗談ですよ。そう警戒しないでください。私は御前の力添えに来たのですから。」
「力添え、ね……。まったく、貴方という人は。私が歯切れの悪い話が好きでは無いのは知っているでしょう。そう意地の悪い言葉選びはよしてください。」
「何、久々に会った可愛い愛弟子との会話を楽しみたかっただけですよ、ハイデス。」
はぁ、と何度目かの溜息が漏れる中、改めて目の前の男に向き直る。
「何を知っているのですか?」
「フフ、最近可愛い子猫を拾ったでしょう?きっと御前には手が余るでしょうからね。」
「っ、本当に……何処でそのことをっ!!」
分かってはいた。この男に呼ばれた時点で何かあると。ましては隠し事など出来る相手ではないのだということを。
でも、改めて突きつけられる事実にカッと頭に血が上るようだった。