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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で




城下を抜け、門を潜ると何やら慌ただしい雰囲気があった。

何かあったのか?
今のところ伝達は届いていない上に来客の予定も無かった筈だ。しかし考えたところで答えはでない、と馬を預けると足早に兵が近付いてきた。

「お待ちしておりました、クロヴィス様。ルシス様がお待ちです。」

「……何だと?」

ルシス……その名を耳にした途端、思わず唾を飲む。
その名を知らぬ者はいない、魔を喰らう闇とまで言われた男だ。

黒魔術師の頂点に立つ、魔術師の理を牛耳る第一人者の一人。その素性は何一つ知るものは居らず、皆誰しもが……生を受け死に至るまでもその姿は変わらなかったとすら詠われる。影で死神と呼ばれ誰よりもその身に黒を纏った男をハイデスは思い出す。

黒魔術師となる為の洗礼を受けたあの時、己の師となった。
魔術師が黒魔術師となるには、既にその力を十分に得ている者からの洗礼を受ける必要がある。
それは非常に難しく厳しいものであった。

魔術師として一人前になった者でなければ認められることはなく、魔力の高さとそれ以上の精神力を必要とした。
暗い、宮殿の奥深くでただひたすらに身体を蝕む闇に耐え続けるのだ。
思い出すだけで吐き気さえも催す恐ろしさ……その洗礼を与えるのが、ルシス・モルゲンシュテルンである。
魔術師の中ではその名を知らぬ者はいないと詠われる程の男だが何せ人前に出ることをあまり好まない人物なのだ。ふらりと現れてはまたすぐにその姿を消してしまうことが多いが、ここ数年は何の気紛れかコーニンクライク魔法学校で臨時講師を勤めていると聞く。

私が今回城へ向かったことは家の者以外誰にも知らせていない。
緊急を要する上に、彼女……天女が見つかったかもしれないという話は己の口から陛下に直接お伝えする必要がある為に早馬も出さなかったのだ。それなのに何故あの男は私が城へ訪れることを知っている?
恐らく、ここで考えたところで私があの男の思考を読めるなどと思ってはいない。ならば直接話を付けてしまうのが恐らく正しいのだろう。
ルシスが何を知っていようがいまいが、ここは大人しくルシスの元へ向かうしかあるまい。私がアンリの事を陛下にどう説明するべきか、心の底では考えあぐねいているのだから。
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