第3章 2 暖かな黒の中で
ドラークと契約を結べるのは現在では龍騎士の一族のみだ。それは野生のドラークと契約することは非常に困難であるからだ。
ましてや卵など警戒心の高い親が守っているのだ。安易に近付けるものではない。
現在ドラークとの契約は一族の中のドラーク同士で交配させ、産まれた子を次の一族の者と契約させるのが一般的。
勿論、ユウェルドラークを持つ者は愚かその存在事態現在確認されていない。
あのドラークの力……不意討ちとはいえ、想像を越えていた。加えてあの力の白さだ。
ドラークは主の力を反映させる事が多い。幼い程その傾向があり卵の状態ならばあれは完全に彼女の持つ力だということだ。
聞きたいことが山ほどあるというのに、本人が何も覚えていないのでは話にならない。
恐らく彼女も自分の状況を受け入れる事で精一杯であろう。
冷静に、こちらの話を聞いて受け答えが出来ている時点で彼女の品格の高さが伺える。
ならば俺はそれまでに彼女を全面的にフォロー出来る体制を一刻も早く用意しなければならない。
だが、彼女が天女だと言えば恐らく国で厳重保護だ。
本来ならばすぐにでも王の身元へと差し出すのが正しい判断である。
しかし、俺は今一人で王の元へと向かっている。
何故か?
そんな事、俺が一番聞きたいところだ。
すぐにでも天女を見付け出して国で保護させる。そうすればザユドの陰謀は止められるのだ。
しかし、それは余りにも残酷に思えた。
一人泣いていた彼女を、右も左も分からない状態で幽閉させるのか?
王が本人の意思を尊重しないとは思えないが、事が大きすぎる……慎重に進めたいが、そう悠長にしていられない。
彼女は恐らく、自分が天女だということは自覚していない。古の言い伝えによると天女は何処か他の国から天使によって召喚されたらしい。ならば、彼女もこの国ではない、遥か遠い国から来たのかもしれない。
そうだとすれば、この世界の事を理解出来ていなかったことも頷ける。
真剣に私の話を聞く彼女は、その瞳の奥に不安を抱えながらも凛としていた。
気が付けば昨日会って、まだ名前程度しか知らない彼女の笑顔が見たいと、そう思うようになっていた。
それにまだ彼女が天女だと確定した訳ではない……その確率が限り無く高いという事には変わり無いのだが。
焦るな、考えろと己に言い聞かせ馬を走らせる。
