第3章 2 暖かな黒の中で
仕事があるから、と屋敷を出ていってしまったハイデス様の背中を窓から見送りつつ、もしかして引き留めてしまったかもと一人反省会。
ハイデス様はその魔力の強さから家族はもう既に他界されているらしい。
でも、魔力の強い人間はわりと当たり前のことで優秀な執事がいるから大丈夫だなんて言って笑っていた。
自分が死なない限り一族の血は絶えない。魔力の強い者はその長寿故に中々結婚しないことが殆どだとか。
うーん、何か複雑な理由がありそうだ。
考え込む私に気を使ってか、メイドさんが部屋に一人にしてくれたのでぼんやりと外を眺めながらこの先の事を思う。
私は思い出すにしても、きっともう帰る場所なんて無いのだから、思い出さなくても構わない。
しかしこのままハイデス様のお世話になるのは気が引けるが、早いところ何か出来るようになろうと思う。
色々と、驚いたけれど冷静に今の状況を受け入れている。
まるでそうなることを知っていたかのように。
それでも、何だか胸につっかえるものがある。
それが何だかわからないまま、考えても仕方がないと腕の中の卵を撫でてやるとやっぱりやんわりと暖かく光る。
この子の温もりに触れていると、気持ちが穏やかになる。
本当に、こんな状況でパニックになっても可笑しくないのにこうして落ち着いていられるのはこの子のお陰なのかも。
どんな子が産まれてくるのかなぁ、なんてこんな状況で考えるのは呑気かな?
それに君が居てくれたから、ハイデス様は助けてくれたのかも。そう思うとこの子には感謝しなくては。
ハイデス様にはゆっくりしていていい、とは言われたけどどうしたらいいか分からない。
とにかく、この世界の事を知りたいから本でも読んでおこうと思う。
丁度この部屋に置かれた本棚から良さそうなものを探す。すると不思議なことに、一瞬読めなかった文字がすんなり読めるようになった。どういうこと?と思ったが、そういえば昨夜も同じようなことが起きた気がする。
どういう現象なのか、ハイデス様が戻ったら聞いてみようかな。
有り難いことに歴史書やその他この国の事が書かれた本が幾つか見付かり、それらを手にする。
歴史はハイデス様が言っていた通り、そしてこの国はカルヴァン王国というらしい。