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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で


ハイデス様の口から話される、まるでおとぎ話の世界のような話に酷い動悸がした。

天使とか本当にいるの?とかそんなことよりも、2000年も苦しんだという天女の事を思うとぞっとする。
……何故か、天女という言葉に聞き覚えがあるような気がするのは何故だろう。
思い出そうとするのに、思い出せない。何か大切なものを忘れている気がするのに……

チクリと傷む胸の奥が、ざわざわと落ち着かない。
どうして、こんな気持ちになるんだろう。

何で思い出せないのか……ほんの少しの記憶のようでいて、とても長い思い出にまるで靄が掛かってしまったかのよう。
思い出そうとすればするほど、遠くへ逃げていってしまいそうで。それでいて、忘れることなんて出来ない何かが。
私は、この世界を知らないのに。

私がどこで生まれて、どこで生活してきたのかを思い出そうとしたら頭の奥の方がチリっと痛んだ。
まるで、思い出してはいけないのだと警告されているようで。

どうして、だとか何で、だとかそんなことを思ったところで何も変わらないのだけれど、思い出そうとすればするほどに胸が苦しくて辛くて、寂しかった。

何とか悟られないように下を向くと卵をぎゅっと抱き締めた。

ハイデスさんは続ける。

この地を救った天女の宝玉、そしてもたらされた呪いと残された人々が手にした魔力……その力は未だに解明されていない部分が多い。

主に人間と関わるのは天使であり、それは天使が神の遣いで、人間は神が作り出した生物だかららしい。
人間はその数を増やす事で神の力を高めると言い伝えられていた。

魔物や悪魔の持つ力であった魔力を人間が持つことで、天使と人間の嘗ての関係は崩れつつあった。

神にとっての人間は、決して護るべき存在ではない。
その事に人間が気付き始めてしまったから。人はその数を増やす事ではなく、命を巡らせる事に意義がある。

生まれ、そして死ぬことに。

死んだ命は神の元へと還される。新しい、神の力となって。
だから、魔力を持ち死から遠退いた人間達と天使は敵対するようになったのだと。天使の使命は、人間の命を巡らせる事だから。

本当に天使がそんなことを……?
だって、天使はキラキラして助けて、くれて……

そこまで思うと、グッと胸が痛んだ。

なぜそう思ったのかは分からない。
でも、そんな話ある筈無いって信じたい私がいた。
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