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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で


「改めて、私はハイデス・ファン・クロヴィス……ハイデスでいい。この屋敷の主で、騎士団に所属する。昨日の事は覚えているようだな。……突然で申し訳無いが、昨夜あの場所にいた理由を聞かせてもらえないか?」

あ、そうだ。ハイデス様だ。此方から聞き直すなんて失礼なことにならなかった事に安堵しつつ、今騎士団って言った?と聞き慣れない言葉が気になる。
しかし、それよりも投げ掛けられた質問に言葉がつまってしまう私がいた。
ここで黙っていてはきっと怪しまれてしまう。
私は素直に、何故あの場所にいたのか分からないこと、自分が何処から来たのか、ここが何処なのかも分からないことを伝えた。

「……記憶が無い、という事か。失礼を承知で君の事を調べさせて貰ったが、アンリという名前で、君くらいの年、容姿の女性は見付からなかった。他の国から来たという可能性もあるが、何より君の話を聞かせてもらいたい。覚えていること、どんな事でもいい、聞かせて貰えないか?」

私を助けたいのだと、そう言って黒の瞳に真剣に見詰められる。
何て優しい人なのだろうか……誰とも知らない、昨日見かけただけなのに。

「失礼だなんて、そんな……有難うございます。私は多分、知らない土地から来ました。きっと、とてもとても遠い場所から。唯一、一度誰かに助けられた記憶があります。でもそれが誰なのか……思い出せないのです。その場所でこの子と出会ったのですが、何か手掛かりになりませんか?」

必死に思い出そうとしても、知らない場所で誰かに助けられた、そしてこの子と出会ったこと、私はこの世界を知らないこと……私がきっと特別な何かだと言うことしか思い出せなかった。

後者は言えなかった。
突然、私は特別な存在なのです!なんて言う女が来たら絶対に危ない人間だと思われる。
唯一、手掛かりになるのはこの卵しかないのだ。私の残された記憶が正しければ、この子はきっとドラゴンなんだと思う……巣穴が分かれば、あの場所が分かるかもしれない。そのくらい、軽い考えだった。

私は、布にくるんだままの卵を出して、ハイデス様に見せる。
布から現れた卵を見るなり、驚愕の表情を浮かべたハイデス様に私はまずかったかと焦った。

生憎、部屋には私とハイデス様の二人だけ。
少しの間気まずい空気が流れる。

「あ、あの……ハイデス様?」
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