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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で


この屋敷のメイドさんだろうか、返事をすると優しい雰囲気の女性が入ってきて、私の様子を確認して手際よく段取りを決めてくれる。

朝食の前に着替えを、と言われ真新しいドレスを差し出され申し訳無いが借りることにした。
そこまで派手な装飾は無いが、それでも上質なものだと言うことは分かる。
着てみると思ったよりも予想以上に動きやすくて驚いた。

その間、必要以上に何かを聞かれることがなく、優しい雰囲気で接してくれるメイドさんに感謝しかない。
……もちろん、酷く腫れているであろう瞼にも触れずに。



身支度を終えた後、食事をと言われたが食べられそうに無かったので断った。

だって、ここまで着替えたということはきっと家主の方と一緒のテーブルに着くのだろう……失礼だと分かっていても今の私には少しハードルが高い。

部屋でゆっくり果物を擂り潰したジュースを口にする。

とにかく、昨夜のあの人にお礼を言わなくちゃ。
当たり前に服まで借りてしまって申し訳無いけれど、そういう常識ならばここは素直に受け取るのが筋だろう。
でもやはり早くお礼が言いたいし、何よりここが何処なのか聞かなくては。


その節をメイドさんに伝えると笑顔で案内してくれるという。
私は卵を確りと抱いて後についた。

昨夜の人、結局本人に会うまでに名前が何だったか聞きそびれちゃったのを後悔しながら。



「旦那様、御客様をお連れ致しました。」

緊張してドキドキする鼓動を誤魔化すように卵を抱き締めながら開く扉の向こうへ視線を移した。


「おはよう。昨夜はよく眠れたかい?」

艶のある黒髪に、優しいテノール。
一見若そうなのに品格のある雰囲気を持った男性は確かに昨夜私に手を差し伸べてくれた人だった。

取り合えず頭を下げ、案内されたソファへ腰を下ろした。

「あの、昨夜は有難うございました。部屋と着替えまで用意して頂いてしまって……」

「構わない。困っている者がいれば手を差し伸べるのが筋と言うものだからな。」

優しい笑顔でそういうとメイドさんが用意してくれた紅茶を然り気無く差し出してくれる。
そのすべてが完璧で見惚れそうになるのを誤魔化すようにカップに口をつけた。
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