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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で


ぼんやりと部屋の中を眺める。

ここの家の人が助けてくれた、ということまでは理解出来たけれど、それ以外何一つ分からなかった。
何か、もっと大切な何かを忘れている……そんな気がしてならないの。

これからどうすればいいんだろうとか、私は誰なのかとか、そんなことを考えなくてはいけない筈なのに私はただひたすらに、寂しかった。
ぽっかりと胸に空いた穴を冷たい風が抜けていくようで。

幾重にも重なった複雑な感情が傷を広げていく。

地に足が付いていない、ふわふわとした感覚。
居場所がない、帰る場所がない……私自身がそう告げている。



気が付けば、処理仕切れない感情が涙となってポロポロと落ちていく。

つらい?くるしい?

いや、そんなんじゃない……ただ、寂しくて仕方がないの。
やっと見つけた、大切なものを無くしてしまったようで。
その答えを知りたいと思うのに、知るのが怖い。

フワフワの暖かな布団にうずくまって、涙で綺麗なシーツを汚してしまうのも気にせずに声を圧し殺して泣いていた。
何故だかはわからないけれど、そうしていないといられなかった。
酷く不安定な気持ちの落ち着かせ方なんて、それ以外にわからなくて。

その時はまだ、部屋の外で私の様子を伺っている人がいることなんて知らずにいた。


布団は涙で濡れてしまっていて、ベッドチェストにティッシュがあったからかろうじで鼻水を垂らすなんていう失礼なことは回避出来た。
すると、すぐそばで優しい光を放つものがあることに気がつく。

卵だ。

「あ、この子……。」

この子、と言ったのは私がそれが何の卵か理解しているから。
ゆっくり抱き上げると鼓動のように光が淡く点滅して、一肌の温もりのように暖かい。
まるで慰められているようだと思った。

何もかも分からないわけではない。
何故か、思い出せるものとそうでないものがある。
その理由を探さなくちゃいけないのだろうと、私はぎゅっと卵を抱き締めたままら、しばらくそのままでいた。

このままずっとこうしているのも駄目だろうな、と思いベッドから降りようとした時、コンコン、と小耳良い音が室内に響いた。

びっくりして声が出せずにいると、ゆっくりと扉が開かれる。
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