第3章 2 暖かな黒の中で
「……そうですね、問題は無い。ですが、貴女は少し危ないですねぇ。」
首筋から首の後ろへと手を入れられて、擽ったくてたまらず目を瞑っていたらそんなことを言われた。ビックリして目を開けると、かなり近い距離でルシスさんと目が合う。さらりと流れた髪が部屋の灯りを遮って、その表情は分かりにくい。
「こんな部屋に大人しく連れ込まれ、隣に座るどころか触れさせることまで許すなど、警戒心が無さすぎる。私の言っていることが全て嘘だとは思わなかったのですか?屋敷の中だからと油断しすぎですよ。ハイデスも、メイドも誰一人として途中擦れ違わなかった事を不信に思いなさい。」
「ぇ、あ……や…、」
「ほら、まだ私が怪しくないだなんて保証はどこにもありませんよ?それに朝だというのに、酷く甘くて魅惑的な香りをさせているのを、貴女自身気が付いて居ないのでしょう?」
ゆっくりとした動きで腰に腕を回される。
まるで蛇に睨まれた蛙。
決して強い力で捕まれているわけでも、何か不思議な力が働いている訳でもないのに、身体が動かない。ほんの少しの時間だというのに、冷や汗が出て喉がカラカラになった。
「、ご…ごめんな、さ…っ、」
上手く、声がでない。
怖い、怖いのに、今この人から目が離せなかった。
「…分かれば良いのです。怖がらせてすみませんでした。でも、これからはよく気を付けるように。貴女は大切な人なのですから。」
え?それってどういう?と言おうとした時、もの凄い勢いで部屋の扉が開いた。
「、っルシス!!貴様人の屋敷で結界を張るだなんて何を考えている!!」
「おやおや、扉は静かに開けるようにと教わらなかったのですか?」
「あぁ、アンリ!大丈夫だったか?こんなところに閉じ込められて、何もされていないかい?」
汗をかき、珍しく声を荒げて部屋に入ってきたハイデスさんが私を見るなり駆け寄ってきた。
突然の事にビックリして目を泳がせる事しか出来ない。
ユフィーが驚いて部屋の角に逃げてしまった。
え、結界って、私閉じ込められてたの?確かに、何かおかしいなとは思ったけど、連れ込まれたって冗談じゃ無かったの?
「メイドが、部屋を出た途端アンリが消えたと慌てて私のもとへ来たからもしやと思ったが、彼女は先日のこともあってまだ安静にさせないといけないというのに。」
