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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で



「えっと、こちらです…。」

なんだか緊張して部屋まで無言で来てしまった。
カチカチになった私を、やっぱりにこやかな笑みで見ると一緒に部屋へ招かれてしまったので大人しく入ることにする。

「申し遅れましたが、私…ルシス・モルゲンシュテルンと言います。どうかルシス、とお呼びください。アンリ嬢」

「あ、ルシスさん…ですね。すみません、私の方こそ名乗らず…アンリです。最近、ここでお世話になってます。」

向かいに座って正面から見られるとちょっと緊張して目が合わせられない。メイドさんもハイデスさんもどこ行っちゃったんだろう…呼んできた方が良いのかなとか思いながら椅子の上で小さくなる。

「そう固くならないで下さい。…私はそうですね…ハイデスの師に当たるものです。貴女の事はハイデスから伺っております。おそらく覚えていないでしょうが、先日街で貴女を助けたのは実は私なのですよ。初対面でいやに親しげだと思ったでしょう?」

「えっ、そうだったんですか…!すみません、私、あんまり覚えてないみたいで…。」

告げられた事実に驚きを隠せない。
ハイデスさんのお師匠様って、それかなり凄い人なのでは?若そうに見えるけど、この人もきっと意味分からないレベルの年齢詐欺なのかもしれない。
それにそういえば今朝、ハイデスさんがルシスさんの名前か何か言ってた気がしたけどそれどころじゃなくて告白以外の話、何も覚えてない…。

「いえ、当然ですよ。今こうして貴女の無事が確認出来ただけで十分ですので。どうです?何か身体に違和感などはありませんか?」

「そういうの、あんまり…寧ろ軽いくらいです。」

「成る程…少し、失礼いたしますよ。」

私が腰かけるカウチに、丁度隣り合わせに座るとその距離感にドキドキした。隣座っただけでこんなにドキドキさせるなんて、さすがハイデスさんのお師匠様、恐ろしい人…。

子供の熱を計るみたいに額に手を添えられる。
ルシスさんの手はひんやりしてて何だか気持ちいい。そのまま首筋に軽く指を添えられたら擽ったかったが、同時にさっきのハイデスさんとの事を思い出してしまい体温が上がった感じがした。
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