第3章 2 暖かな黒の中で
「アンリ、アンリ待ってくれ!」
部屋から出ようと扉へ駆ける私を、ハイデスさんは後ろから抱き締めた。
「、だっダメ!だって昨日私、…ハイデスさんにあんな……汚い、酷いことさせてっ、ここにいる資格ない…、!!」
ハイデスさんの腕をほどこうとするも、気が付けば目の前にハイデスさんがいて、私は唇を塞がれていた。
「、っ、…!」
なんで、…
離れようとしても、頭を手で支えられていて叶わない。ぬるりと熱い舌が私の唇をなぞり、すぐにその隙間を割って入ってきた。
「っふ、…ぁ…、」
舌が絡め取られ、抱き締められる力が強くなる。
急な口付けに戸惑い受け入れるだけで目一杯な私は、突然のことに思わず動けなくなった。
「、…なんで、ハイデスさん…」
「すまない…、…嫌だった?」
「いやじゃ、ないです…、」
私の戸惑いながらの問いかけに、何故か眉を落とすハイデスさんが、どこか弱々しく見えた。
「ああ、……良かった。私はずっと、君の目を見てこうしたかった。一度発作を起こした君に触れたんだ…すまない、黙っていて。
あの時の君は、私ではない誰かを見ていた。そして、天使に襲われた君をルシスが助け、発作に苦しむ君に私ではなくルシスが触れているのを見ていられなくて、私は最初逃げたんだ。」
どこか苦しそうに言うハイデスさんに、目が離せなくなる。
「この、醜い嫉妬を表に出すことが出来なかった。すまない……こんなこと、父として君を迎えた筈の私が伝えて良いのか分からない…でも、君が好きだ。好きなんだよ、アンリ…。」
突然の告白に、ハイデスさんは戸惑う私を笑うと抱き寄せた。
「返信はいらない。混乱しているだろう…でも、ここにいる資格が無いだなんて、そんなことは言わないでくれ……私は、君にここにいて欲しい。私の隣で、笑っていて欲しいんだ。それでは、君がここにいる理由にはならないかい?」
「いえ、そんな……十分すぎるほどです。」
「良かった、そう言ってくれて。昨日のことは、その…すまない。あんなことがあった後だ…必要な事だったとはいえ、君が昨日の事を忘れているのならば無理に思い出させることはないと思った。君につらい思い出を増やさせるだけだと思ったんだ。」