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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で


彼女が、アンリが私のもとに現れてから私の生活は一変した。いや、正確にはそこまでの大きな変化はないのだが、私の心にはとても大きな変化をもたらした。
これは本当に私自身も驚いている。

だから、気が高ぶっていた。舞い上がっていたのだろう。

彼女を放す手が、震えた。

本当に、われながらバカだと思う。

彼女が昨日の事を覚えていて、そのせいで様子がおかしいだなんて事は分かっていた。
本当は屋敷に残しておくべきだったのだろう。

なのに、彼女の明らかに無理をしている言葉に気付かないふりをしたのは私だ。

屋敷に残してしまったら、彼女は昨夜の事をずっと考えているだろう。

私が、そうであるように。
否、私は私と同じように彼女が昨夜のことを少しでも覚えていて、そしてあれが私だったと気が付いて欲しいのだ。
私の全ては昨夜の彼女との出来事に囚われている。
忘れられない、あのしっとりと濡れた肌に、胸からこぼれる甘さに、柔らかな割れ目から滴る蜜の薫りに。

忘れられない。

かつて、天女の魔力を口にした者はその味に囚われたというが、もう、息を荒く倒れている彼女を見た瞬間……その香りに当てられた私の理性は切れかけていた。

感じたことの無いほど強く、甘い魔力に包まれた部屋で、乱れ震える彼女が美しかった。

この私が酷い魔力酔いを起こすほど強い魔力を含んだ彼女の蜜に、私は狂わされてしまった。
少しでも、せめてあの香りだけでもと彼女に近付こうとしている私がいる。

だから、彼女も同じように私との夜を思い出して欲しい。
考えて、考えて、あれが私だということに気が付いてしまえばいいと、そう思った。

でも、きっと彼女は気付かない。
彼女は、私のこの手があの絹のような柔肌に触れ、誰しもが夢にまで見た天女の甘い蜜でこの唇を濡らした事を、知らずにいるだろう。

だからいけなかった。

初めて彼女を外に出すというのに、私は自分のことばかりで、どれだけのものが彼女を狙っているかなど、気にも留めていなかったのだ。
ましてや人ならざるものでさえ、こんなにも早く彼女を見つけ狙ってくるなど、私は思ってもみなかったのだ。
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