第3章 2 暖かな黒の中で
ガラスのようなものが砕ける音。
キラキラした破片が、空から降ってくるこの光景を、私はどこかで見たことがあるような気がした。
けれど、すぐに強い衝撃と共に地面に叩きつけられた私は、ぐったりしたまま何とも雑に転がった。
痛い。
それだけは感じたがもうまともな意識は残っていなくて、視界の奥に真っ黒い人影をぼんやりと見た。
長く伸ばされた黒髪に、真っ黒いマント。
もはや魔物のような姿の天使が、その奥で地面に沈んでいったのを確認し、そのあとはもはや記憶というにはあまりにも曖昧なものだった。
うっすらと記憶に残ったのは、光さえも呑み込んでしまうような黒で、どこかハイデスさんを連想させられるその色を私は美しいと思った。
そのあともずっと虚ろな意識だった気がする。
記憶があるようでないような、そんな不思議な感覚の中で私はずっとその人のことを掴んで離さなかった。
体中を襲う悪寒のようなものが恐ろしくて仕方がなかったから。精神と体が切り離されてしまうような、そんな不安感。
どこか深いところに落とされてしまう感覚に、私は必死にしがみついていた。