第3章 2 暖かな黒の中で
だ、ダメだ……これはジェイドさんからの助け船は期待出来そうにないと諦めてチラッとハイデスさんとエルメスさんの方を見る。
そんな私に気付いてか、エルメスさんが楽しそうに笑った。
「あぁ、確かにこれ以上は可哀想だ。仔猫ちゃんが泣きそうになってる。」
ごめんごめん、悪気は無かったんだ。
そんなエルメスさんをハイデスさんが少し睨むとおどけたように肩をすくめた。
「いや、悪かった。お前がプライベートで誰かを大切にしてるってのが嬉しくて。で、そんな二人の中を裂いちまって悪いんだが、少しハデスを借りても良いか?」
聞くと、少し二人で話したいことがあるそうだ。
お仕事の話しかな……だとしたら流石にお邪魔だろうから、私は退いた方がいいのだろう。
ジェイドさんが私について屋敷まで一緒に帰ってくれる事になったので、店を出ることに。やたらとハイデスさんが心配してくれたが、帰るだけなのだから大丈夫だろうと思っていた。まさかあんなことになるとは、この時は思ってもいなかった。
ハイデスさんとエルメスさんを店に残し、先に帰路に就く。
「お二人は、仲が宜しいんですね。」
「ええ、学園時代からの旧友で、お二人共努力して今の位置に就いておられます。多事多難な時を共に乗り越えてきた、良き相棒とでも言いましょうか。」
「それは、素敵ですね。何だか、正反対の性格にも見えるのに。」
「今でこそ、ですかね。以前は衝突することも少なくはありませんでしたよ。」
学生時代のハイデスさんか……それは少し気になるかもしれないな、なんて思いながら歩いていると馬車が迎えに来るのが見えた。
乗り込むときに、ふと近くの店のガラスに映る自分と目があった。耳元に飾られた黒いバラが少し落ちそうだったので、しっかりと挿し直す。
これ、どのくらいもつのかな…やっぱりすぐ枯れちゃうのかな。
そう思いながら見ていると、ジェイドさんがそれに気付いた。
「もし宜しければ、この先にバラを加工して長期保存出来る店が御座います。然程距離も御座いませんので、お嬢様さえ宜しければご覧になっていかれますか?」
「え、そんな……良いんですか?」
勝手に寄り道なんて、そう思ったが、出来ることなら是非やって欲しい。わがままかな、とも感じたが行きたい気持ちを伝えるとジェイドさんも心なしか嬉しそうだった。
