第3章 2 暖かな黒の中で
そのままいくつか雑貨店、仕立屋、身の回りのものを揃える為に店を巡り、少し休憩しようと言うことで目についたカフェに入る。
「少し疲れたかい?すまないね、連れ回してしまって。」
「いえっ、とても楽しくて……ありがとうございます。」
とても爽やかな笑顔を向けてくれるハイデスさんに、少し恥ずかしくなった。だって、今日一日、何故かハイデスさんの距離がやたらと近かったからだ。
昨日の夢も相まって、ドキドキしっぱなしの私の心臓が心配になるくらいには。
嫌だった訳ではないが、このままでは本当に心臓がもたなかったから休めるのはありがたい。
店内は落ち着いていて、私たちと同じように穏やかな午後の一時を過ごしている人達が何組か見られる。
皆、同様に御付きの者が控えているのである程度身分の高い人達なのだろう。かといって、堅苦しい空気もなく、比較的カジュアルに訪れることが出来るお店のようだ。
私は紅茶とケーキ、ハイデスさんはコーヒーを片手に道行く人達を窓越しに眺めていた。
「お?誰かと思えば、珍しいなこんなところで!」
声のした方を見ると、栗色の髪に清んだ深い青の瞳をキラキラと輝かせた青年が手を振りながらこちらへと向かってくる。
「エルメス?お前こそ珍しいな……」
すぐさま席を立ったハイデスさんがその人の元へ向かう。
どうやら、随分と親しい人のようで砕けた口調で話す二人。
知り合いなら、邪魔しちゃ悪いな……と紅茶を手に伸ばしたそこへすぐ人影があった。
「こんにちは、邪魔しちゃって悪いね。俺はエルメス。エルメス・メンゲルベルクだ。ハデスとは学園時代からの旧友で、今は上司と部下って間柄になってる。よろしくな、噂の仔猫ちゃん。」
「あっ、えっと、…はい??」
そのキラキラしたオーラに少し圧倒される。そして次いで出た単語に思わずフリーズしてしまった。
仔猫って、私の事??
「おい、エルメス……出会い頭に彼女を困らせるんじゃない。すまないアンリ、こいつはこういう奴なんだ。」
聞くと、私の事はもう話には聞いているらしく、ハイデスさんの部下で副隊長さん。ちょうど街を歩いていた時に外からハイデスさんが見えたので声を掛けに来てくれたらしい。
軽い挨拶をすませ、立ち話もなんだということで三人で席に付いた。